研究課題/領域番号 |
18KT0026
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
南 敬 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (00345141)
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研究分担者 |
倉林 伸博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40581658)
大里 元美 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員教授 (90314286)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | ダウン症 / 血管病変 / 複合疾病 / ダウン症モデルマウス / 脳神経と血管相互作用 / クロマチン動態 / 動脈硬化 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
ダウン症モデルとして Ts1Cje を用い、これに動脈硬化モデルとして ApoE 欠損マウスを掛け合わせ、高脂肪食負荷を行った場合、Wild type (WT) +ApoE 欠損のコントロールに比べ、大動脈基部の動脈硬化プラーク形成能が顕著に減少していることを新たに見出した。これは、ダウン症患者での疫学でも捉えられており、モデルマウスでも同じ傾向があることは、これからの抗動脈硬化能の機序解明に役立つことが期待される。ダウン症マウスでは、肝臓の炎症度合いはWT と比べ変化がないのに対し、中性脂肪とLDLが有意に減少していた。ヒトとの単純比較が難しいが、マウスでも代謝ケージを用い更なる解析を進める予定にしている。 一方、ダウン症因子(DSCR-1)の欠損マウスを基にApoE欠損マウスと掛け合わせた場合、ApoE 欠損マウスに比べ肝臓での炎症(NAFLD) が進行し、肝機能不全からさらに高コレステロール血症になること、末梢での脂肪腫や角膜混濁に至ることが判明した。そのメカニズムとして中小血管内皮ではSDF-1/CXCR4の上昇から病的血管新生が誘導されること、マクロファージからの VEGF 産生量が増大することを見出しているが、論文化において更なる機構解明が求められたので、DSCR-1欠損に寄り、酸化ストレスが向上し、その結果余剰コレステロールから酸化 LDL となってその炎症スイッチが惹起されることで、ApoEとDSCR-1の両欠損マウスがこのような病態を示すきっかけとなりうるのかこれから検討していく計画である。 また協同研究者からダウン症 iPS 細胞の供与を受け、本学での倫理審査をパスすれば、内皮細胞への分化系は既に確立しているので、ダウン症由来血管の特徴やクロマチン動態を解明する目的で、Single cell seq や Hi-C 解析に向けて準備をはじめたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今まではモデルマウス構築でトラブルもあったが、ヒト人工染色体技術からのダウン症モデルマウスの供与、ダウン症iPS 細胞の供与をもとにこれから分子基盤の解析に、より集中出来る環境になってきた。論文化においては、revision の段階であるが、reviewer の意見に沿った実験を開始するには、試薬入手とマウスの供給が最大律速なので、この点に関してはかなり不安要素である。
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今後の研究の推進方策 |
一方、SARS-Cov2 の影響は熊本大学でもでてきており、これからの試薬供給や研究室運営、研究者と学生の健康管理など不安なところも多々存在する。先ずはできるところから進めていくが、遺伝子改変マウスの維持がストップした場合は、再び解析出来るまでに半年以上無駄にするため、回避できるように願っている段階でもある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規ダウン症モデルマウス作製のプロジェクト進行において、雇用していたポスドクの離職(技術面及び本人との話し合い)により、その分が大きく予算の差額として出てきた。また、新しくこのモデルマウス作製を今年度取り組むだけでなく、鳥取大学、香月博士との協同で、人工染色を用いたダウン症トリソミーモデルマウスの供与も進めている。ここから遺伝子編集にて新たに迅速に領域選択トリソミーマウス作製が可能となった。COVID19 の問題もあるが、モデルマウスの病態解析に本予算を集中的にあてて、実験計画を進めている。
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