研究課題/領域番号 |
18KT0029
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
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研究分担者 |
鳥海 不二夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30377775)
丹野 宏昭 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (70637149)
片上 大輔 東京工芸大学, 工学部, 教授 (90345372)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2022-03-31
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キーワード | ヒューマンエージェントインタラクション / 人狼ゲーム / 社会的知能 |
研究実績の概要 |
本研究では、集団討論において、話者間に共感を生みだす相互の身体的振る舞いの習得を支援する教示デバイスの開発を目指す。集団討論は個々の意見を交換し、そこから創発的に意見を生み出し、集団間でそれを集約することが求められる。集団討論の言語的な分析は多く行われているが、共感を生み出す仕草や振る舞い、タイミングなど、言語に還元できない要素(オラリティ)が重要である。本研究ではその要素の解明、およびその習得を補佐するデバイスの作成を目指す。議題の選択による参加者への影響を抑え、一般的な知見を導くため、本研究では集団討論における身体的相互作用の指標課題として、討論を通じてグループ内の信頼を勝ち取る教育ゲームである「人狼ゲーム」を用いる。身体的相互作用の測定、データ取得、分析、教示デバイス作成の4グループに分かれて研究を進める。2018年度はプラットフォームの開発と対人人狼ゲームの測定とデータ化を進めた。データ取得の手法として、ゲームマスターを用いた役職公開、投票と追放、能力行動など、ゲームにおける特徴的な行動を手動で記録するためのソフトウェアシステムの開発をソフトウェア会社と協調して行った。本結果をCEDEC2018、HCGシンポジウム2018にて発表した。同時に、画像処理を用いて表情認識、手、頭、上半身など、共感生成に特徴的とされる部位の動作を非侵襲で測定するモーションキャプチャシステムを作成し、VR人狼渋谷および電気通信大学にて測定を行った。測定結果を分析した結果、ゲームの勝敗と非言語情報の間に相関が発見でき、説得につながる非言語情報の分析ができた。本結果を人工知能学会全国大会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度はプラットフォームの開発と対人人狼ゲームの測定とデータ化を進めた。データ取得の手法として、ゲームマスターを用いた役職公開、投票と追放、能力行動など、ゲームにおける特徴的な行動を手動で記録するためのソフトウェアシステムの開発を、ソフトウェア会社である京都イノベーションと連携して行った。開発システムを用いた分析結果を2018年8月のCEDEC2018で発表した。また、同学会で行われたAIのプログラムコンテストの1つである人狼知能大会の決勝に進出した5チームによる対戦のログデータを用いて、人間が行う様な音声感情と動作情報を表出する擬人化エージェントを用いて人狼知能同士による議論の様子を可視化し、人間同士の議論に近い雰囲気を感じたかどうかの検証を行った。本研究結果をHCGシンポジウム2018にて発表した。同時に、画像処理を用いて表情認識、手、頭、上半身など、共感生成に特徴的とされる部位の動作を非侵襲で測定するモーションキャプチャシステムを作成し、VR人狼渋谷および電気通信大学にて身体動作、音声、脳波の測定を行った。測定結果を分析した結果、ゲームの勝敗と非言語情報の間に相関が発見でき、集団討論において、話者間に共感を生みだす相互の身体的振る舞いにつながる非言語情報と思われる現象を発見した。人狼ゲームに強いプレイヤーは、共感を生み出す仕草や振る舞い、タイミングなど、言語に還元できない要素を得ていると考えられるため、これらの相関を今後は詳細に分析予定である。こちらの分析結果を、人工知能学会全国大会にて発表予定である。また、VR人狼渋谷の高橋氏と相談を行い、次年度に向けてどのようなデータを自動化して取得するべきか、検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続きプラットフォームの開発、修正を行う。この年度の終わりまでに、プラットフォームを完成させる予定である。同時に対人人狼ゲームの測定とデータ化とコミュニケーション技能習得過程の分析を行う。データはVR人狼のみで取得することを考えていたが、2018年度は事前に取得範囲を明確にするため、電気通信大学で予備的な評価を行った。したがって、主なデータ取得は2019年度以降に行う予定である。データ取得においては、実際にシステムを稼働させ、フィールド上での計測を行い、データを集める。分析では人狼ゲームの分析を行う丹野宏昭(東京福祉大)が主導的な役割を担う。得られた人狼ゲームデータを分析し、経験を重ねていくにつれてどのような推論、説得の戦略が生み出されているか、表情・ジェスチャの同調など、どのようなスキルを獲得しているか分析する。2020年度からは、教示デバイス、エージェント作成を行う。教示デバイスはウェアラブル型を想定し、システムによって行動をモニタされた環境のもと、会話に数十ミリ秒単位で介入し、頭や胸に取り付け、適切なタイミングで教示を行って身体的相互作用の習得を促す。また、同時に研究代表者の開発する、表情投影が高速に可能なロボット型エージェントを用いた模擬訓練のシステムを作成する。模擬訓練では、我々の開発した人狼ゲームを行うためのプログラムを用い、これに本研究で得られた身体的相互作用を追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に行うVR人狼渋谷での測定を、2019年度にずらし、予備的な評価を電気通信大学で行った。そのため、VR人狼渋谷における測定の費用支出を2019年度にずらすことになった。
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