研究課題/領域番号 |
18KT0033
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
尾崎 まみこ 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00314302)
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研究分担者 |
針山 孝彦 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任教授 (30165039)
永田 仁史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40301030)
綾部 早穂 筑波大学, 人間系, 教授 (40323232)
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 副学長 (70204550)
小早川 達 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (70357010)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 新生児 / 体臭 / 化学分析 / 心理効果 |
研究実績の概要 |
ヒトの新生児の体臭は、母との関係を築く上で重要な働きがあるといわれている。また胎児にとって環境の全てともいうべき羊水のにおいが、それぞれの新生児の体臭の個体差の形成に重要な役割を持っているとも考えられている。我々は、新生児に与えるストレスを最小限にとどめた非侵襲的なにおいの採集法を考案し、5人の新生児の頭部のにおいを採集、GC×GC-MSによって化学分析を行った。羊水のにおいについても同様に化学分析を行った。この結果、新生児の頭のにおいからは31種類、羊水のにおいからは21種類の揮発性化合物を特定した。このうち、15種類の化合物が新生児の頭と羊水の両方のにおいに共通してみられた。また新生児の頭のにおいの主要成分はノナナールであること、新生児のにおいは出生直後から酸化などによって経時的に変化していくこと、また、羊水のにおいが新生児の体臭に与える影響はそれほど大きくなく、新生児の体臭は新生児自身が継続的に合成し、分泌する化合物によって構成されていることが示唆された。次に、生後1時間以内の新生児のにおい、生後2~3日の新生児のにおい、羊水のにおいの3種類のにおいを人工的に調香し、これらの調香品を用いて神戸大学の学生62人を対象に心理実験を行った結果、3種類の調香品の違いを嗅ぎ分けられることがわかった。また、新たに19人の新生児の頭のにおいを同様の方法を用いて採集して分析を行い、19種類の調香品を調合した。19種類の調香品の化合物含有率を比較すると、14種類の調香品は匂いを構成する化合物の含有率が類似していたが、他の5種類の調香品はある特定の化合物の含有率が高く、特徴的なにおいであることが分かった。これらの成果をまとめて原著論文を発表したところ国内外からの反響が大きく、現在、JSTのPCT審査を通過したので特許を申請する予定である。国内学会に発表した学生が大会長賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新生児の匂いの採集と化学分析を終えて、心理実験を始めたところで、新型コロナ感染症の流行が始まり、人を集めての実験が一切できなくなってしまったため、心理実験が全く進まなくなった。脳計測の実験も、浜松医科大学医学部の機器を使用する予定であったが、こちらも外部の研究者を入れての実験が進まなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ事情が解消されない限り今後の推進は困難である。コロナ事情が改善されればば、当初の予定通りの計画1)~3)をスピードアップして進めていく。 1)感覚評価の心理実験、2)fMRI実験、3)唾液中オキシトシンの定量比較
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に並行して実施していた別の科研費課題の担当博士研究員が途中で海外大学へ就職したので、本課題を担当している博士研究がエフォートを分けてそちらの課題を担当したため、本課題の当初予定の雇用費が全て使用されず、次年度使用額が生じた。 この金額は、次年度に本課題を担当する博士研究員の雇用費として使用する予定である。
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備考 |
(2)は海外向けのプレスリリースです。英文タイトルは以下の通り。 Sensory and chemical analyses of the odor of newborn babies’heads suggests importance in facilitating bonding and care-giving behaviors
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