研究課題/領域番号 |
18KT0036
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
黒田 公美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90391945)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 母性行動 / 養育行動 / コモン・マーモセット / 愛着 / コミュニケーション / 発声 |
研究実績の概要 |
マーモセットの家族ぐるみの子育て行動において、父・母・きょうだいといった属性により、子育てに関わる変数が影響を受ける。具体的には、年少のきょうだいは初期にはとくに子を背負い始める潜時が長かった。これは子の回収には一定の経験が必要であることを意味する。また、父親マーモセットは生後2週目の背負い率が減少する。これはこの時期に産後メスに起こる、Postpartum ovulationのため、性行動によりmotivationが働く結果、子育て意欲が低下すると説明できる。実験開始後、他のことに気を取られることなく、鳴いている子にすぐに近づく「高感受性」、子を背負ったのち拒絶することなく背負い続ける「寛容性」の両方を示す個体は、とくに母親に多かった。 また属性とは別に、マーモセットでは個体ごとの養育スタイルの差異はかなり大きい。背負った後、20秒程度もたつとすぐに子をかむ、壁にこすりつけるなど拒絶をはじめる「低寛容性」、子が鳴いているのに一人で遊ぶなどしてなかなか背負いに行かない「低感受性」を示す個体も存在する。この傾向は、特定の子や、特定の子の性別において統計的有意差は認められず、異なる出産でも一貫する傾向があることから、個体固有の養育スタイルであると考えられた。そこでこの世話個体の属性が子の愛着行動に与える影響を検討した。その結果、子が背負われているのに鳴き続ける状態、あるいは世話個体との接触をむしろ回避する状態は、世話個体の寛容性が低くなると増大することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度までの研究はおおむね順調に進行した。しかし、2020年4月以降は、新型コロナウイルス対策のため、在宅勤務に切り替える必要が生じた。そのため、マーモセットの実験の遅延だけではなく、飼育・健康管理にも手を書けることが難しくなり、2020年の研究準備にはある程度の遅れが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
人間の乳幼児で提唱されている、ストレンジシチュエーション法での4分類に相当する、マーモセットでの愛着行動類型を構築する。具体的には、愛着型(背負われるまでは鳴くが背負われるとすぐに鳴きやむ)、回避型(背負われても自分から降りてしまう)、不安型(背負われてもなかなか鳴きやまない)、混乱型(泣いているのに、しがみついていかない)が存在することが、予備実験から想定されており、この詳細を行動解析によって確立する。さらに、家族内の世話個体と1対1での行動試験において、世話個体の寛容性・感受性と、子のその世話個体に対する愛着行動を、子の日齢の影響を加味して相関分析する。8家族、15回以上の双子出産のデータを総合し、総試験数N≧250を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
マーモセットの飼育、実験に従事する研究補助員が事情により休職した期間があり人件費の支出が抑えられた。翌年度は主にマーモセット行動試験と飼育、解析に掛る人件費、およびマーモセット飼育費、実験に必要な物品購入に使用予定。
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