研究課題
人間の乳幼児や成人で提唱されている愛着パターン4分類に相当する、マーモセットでの愛着行動類型をおおむね完成した。具体的には、ホームケージの一部を利用した、マーモセット版の親子の分離―再会試験(8家族、15回以上の出産、総試験数N≧250)の親子の行動を詳細に観察し、正常範囲の子育ての親と、その子の親に対する愛着を、次の3種に分類した。①安定愛着型(背負われるまでは鳴くが背負われるとすぐに鳴きやむ)、②不安型(親と再会し背負われてもなかなか鳴きやまない)、③回避型(背負われていても自分から降りてしまう、あるいは親が背負おうとしても子が応じない)である。これらの子マーモセットの愛着がどのような子育てスタイルの親により多く見られるかを分析したところ、親が子に対し拒絶的であればあるほど、①が減少し、まず②が、最終的に③が増加した。さらに完全/部分人工保育を受けた子マーモセットの行動を観察し、人間の愛着でいう④混乱型(泣いているのにしがみつかない) に類似した性質を示すことも明らかになった。またこれまでにマカクザルで報告されている、人工保育が社会行動発達に与えるネガティブな影響に加え、非社会的報酬(好まれるおやつ)に対する発声行動もネガティブになるというパラドキシカル反応を見出した。これは生後早期の社会的環境の不足とそれにともなうストレス持続により、社会行動のみならず報酬系全体に人間とも共通するAtypicalな発達が引き起こされることを示唆する所見である。マーモセットでの愛着パターン発達を人間の乳幼児または成人でこれまでに報告されている愛着研究と比較すると、人間の乳幼児でSafe haven(ストレス状況で愛着対象に接近する)行動とSecure base(愛着対象に遭遇し安心するとまた探索に向かう)行動の両方が、基本的な部分はマーモセットにも存在することが強く示唆された。
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Cell Reports
巻: - ページ: -
Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: 74 ページ: 516~526
10.1111/pcn.13096