研究課題/領域番号 |
18KT0040
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野田口 理孝 名古屋大学, 高等研究院(農), 助教 (00647927)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 接木 / トランスクリプトーム解析 / 接木関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
農作物生産におけるモノカルチャーの拡大は農業産業化に貢献した一方、その弊害として生物多様性の喪失、土壌衰退、ひいては地球規模の環境破壊の増大を招いた。世界人口急増という目下の課題の元、モノカルチャーの包有する脆弱性・環境リスクには注意が向けられるものの、生産者にとって利便性の高いシステムであり、直ちに停止することは事実上困難である。そこで、モノカルチャーを排除せず受け入れつつも、生物多様性を担保する新しい栽培システムの構築を「接木」という古典的な農業手法に焦点をあて、本研究ではその利便性を高める技術改良へ向けて検討を行った。 既遂研究として、これまでに接木部位の時系変化を形態学的に調べ、合わせてオミクス解析を行い、分子情報のデータベースを構築してきた。これまでの研究で、細胞壁修飾に関連する遺伝子が多く発現することが見出されており、研究の進んだものとして細胞壁消化に関わるセルラーゼ遺伝子が接木の成立に重要であることを見出してきた。接木部位で細胞壁消化が起こることによって、接木境界部の細胞同士が近接して接合されやすくなることが推察されたが、最終的に接合されるためには、さらに細胞壁消化後に互いの細胞壁が架橋されることが重要であると考えられた。そこで本研究では、同様のデータベースを用いて、細胞壁消化ではなく、反対に細胞壁をつなぐ因子の単離を試みた。接木部位で細胞壁を架橋することができれば、接木部位の接着性は高まり、接木技術を改良することができると考えた。 これまでに、タバコ属植物が接木を得意とすることを見出していたため、本研究でもタバコ属植物から細胞壁架橋に関わる因子を探索した。関連するトランスクリプトームデータを再解析した結果、新たに1つの細胞壁架橋に関わる遺伝子を同定することに成功した。今後、この遺伝子の機能をより詳細に調べていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、接木技術の利便性を高めることを目的に、技術改良を目指している。これまでに、接木の分子機構をトランスクリプトーム解析によって調べることで、接木部位が接着する際の細胞壁架橋に関与する遺伝子を同定することができた。知見に基づき、接木部位で細胞壁を架橋することが促進できれば、接木部位の接着性は高まり、接木技術を改良することができると考えられ、研究目標に向けた着実な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
同定された遺伝子について、接木部位で発現誘導できる形質転換体を作出する。それら形質転換体の接木試験を行い、接木への影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
人材のリクルーティングがなかったため、今年度の人件費の支出がなかった。次年度は、タバコ形質転換体植物の作出に大きなコストが必要であるため、人件費を多く当て、そちらに重点をおいて予算を執行し、研究を遂行する。また実験の都合上、微量高速冷却遠心機の追加購入の必要性が生じたため、そちらを購入して円滑に研究を遂行する。
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