研究課題/領域番号 |
18KT0047
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
町田 千代子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70314060)
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研究分担者 |
堤内 要 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50329851)
金政 真 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (50361788)
吉崎 隆之 福山大学, 生命工学部, 准教授 (70515189)
塚本 義則 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60592079)
小島 晶子 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (10340209)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 甲州種 / ウイルス / ワイン醸造 / 成長点培養 / 植物ホルモン / ぶどう |
研究実績の概要 |
2013年、「和食」がユネスコ世界文化遺産に登録され、近年の世界的な和食ブームとも相まって、和食に合うワインが必要とされている。日本の固有種である甲州ブドウ(以後、甲州種とする)から造られる白ワインは柚子の香りがすることから最も和食に合うと言われている。2010年6月、「甲州」がブドウ・ワインの国際振興機関「OIV」に正式登録され、ブドウの品種名をラベル表示してEUへ輸出できるようになり、甲州種を用いた一部の国産ワインが世界に認められ始めた。甲州種は、DNA解析から、3/4はヨーロッパ種であるVitis veniferaであること(1/4は、中国の野生ブドウのDNAが含まれている)が報告され(後藤ら、酒類総合研究所報告2013)、優れたワインができると考えられている。一方、甲州種を用いたワインは、期待は大きいものの、未だ、十分なワインの質、量の供給には至っていない。日本の甲州種のブドウ樹がブドウの成熟を妨げるウイルス(ブドウ葉巻病随伴ウイルス)に感染しているため糖度が上がらないことが主な原因であると言われている。ヨーロッパや米国では、「成長点培養法」によって得られたウイルス非感染ブドウ苗を公的機関が供給する体制が確立している。一方、日本においては、このような公的機関はない。また、甲州種の「成長点培養」頻度は、種々のヨーロッパ品種に比較して極めて低く(数%)、甲州ブドウを用いた成長点培養頻度の効率化は喫緊の課題である。我々は、本年度、新規なホルモンを用いて濃度条件を検討し、「成長点培養」頻度を十数%まで上げる事ができた。また、ウイルス非感染ブドウ苗の新たな圃場での栽培を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に成長点培養頻度を効率化する条件を確立した。我々は、甲州種の成長点培養におけるホルモン濃度などの詳細な条件検討を行った。その結果、甲州種は、欧米品種に比較して、サイトカイニンホルモン濃度を低くした場合に、シュート再生可能である事がわかった。次に、発根について検討した所、既存の植物ホルモンを使う限りでは、発根効率が低いため、成長点培養の成功率は数%であった。本年度、3種類の新規オーキシンについて、発根条件を検討した所、約50%の頻度で発根する事ができた。しかしながら、土に植え替えた段階での成長が悪かった。土に植え替える時の条件については今後検討する必要がある。第二に、ウイルス非感染ブドウ苗の圃場での栽培技術の確立をめざした。岐阜県と静岡県において小規模ではあるが、ウイルス非感染ブドウ樹の栽培を2017年にスタートしたが、苗木の本数が少ない事、2018年の気象の影響(台風)を強く受けたため、収穫にはいたらなかった。第三に、温室栽培で得られたブドウ(Brix 23)を用いて試験醸造したワインの成分分析を行った。コントロールとしてBrix 16の甲州ブドウ(ウイルス感染樹から収穫)から醸造したワインを用いて同時に醸造した。それらの化学成分について分析し比較した。これまでに、Brix 20以上の甲州ブドウ果実を用いたワイン醸造の報告はない。今回の我々の解析結果について、さらに詳細に検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に成長点培養の効率を上げるための培養条件の検討をさらに進める。特に、土に植え替える時の条件について検討する。第二に、気象による影響を考慮し、ウイルス非感染甲州ブドウ樹を複数の圃場に植え、収穫をめざす。また、長期的な栽培に備えるため、ウイルス非感染甲州ブドウ樹に接ぎ木(フィロキセラに耐性なモンペリエ等を台木として用いる)を行い、圃場に植える。第三に、圃場で収穫したブドウを用いたワインの醸造を試みる。糖度の高い甲州ブドウ果実を用いて醸造したワインの化学分析を行う。以上を通して、日本固有の甲州種による、ワインの品質の向上をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、研究技術員、又は、博士研究員を雇用する予定であったが、適当な人材が得られなかった事が、主な理由である。今後は、研究補助員、短期でも可能な研究員を雇用し、培養、栽培を促進する予定である。
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