研究課題
甲州種は2010年にワインの国際振興機関「OIV」に正式登録され、甲州種で造られたワインはEUへ輸出できるようになった。甲州種のゲノムの約3/4がヨーロッハ種Vitis veniferaであることが報告され、優れたワインができると期待されており、甲州種の白ワインは最も和食に合うワインとして、世界的にも着目されている。また、ワイン法が2018年10月から施行され、日本国内で栽培されたブドウを100%使用して醸造された日本ワインへの期待が高まっている。しかしながら日本の醸造用のブドウの多くはウイルス感染しており、甲州種もその例外ではなく、糖度が上がらず、熟成度が低い一つの原因であろうと考えられている。欧米では「成長点培養法」に よって得られたウイルス非感染ブドウ苗を公的に認められた機関が供給する体制が確立している。日本ではウイルス非感染ブドウ樹の作出と安定的供給が確立していないため、日本の醸造用ブドウ樹の多くがウイルスに感染していると予測されている。さらに、甲州種の「成長点培養」の成功率が極めて低い事(数%)から、甲州ブドウを用いた成長点培養頻度の効率化をはかる事は喫緊の課題となっている。我々は、第一に、シュート形成に最適なサイトカイニン濃度を明らかにし(Nakagawa et al., in press)、新規なオーキシンを用いて発根率を50%まで上げる事ができた(論文準備中)。第二に、葉がカールする分子機構とウイルス感染との関わりについて考察した(Machida et al., 2022)。第三に、ウイルス非感染甲州の圃場栽培のブドウ樹から糖度の高いブドウ(糖度19)が収穫できた。果汁の化学分析を行い、ウイルス感染樹のブドウと比較して、糖度、グルコース-フルクトース比、リンゴ酸濃度、総ポリフェノール量に関して大きな差異が認められた。今後収穫量を増やしてさらに解析を進める。
3: やや遅れている
甲州ブドウを用いた成長点培養頻度の効率化をはかる事は喫緊の課題である。ウイルス非感染ブドウ苗の新たな圃場での栽培を開始した。標高100 mの圃場栽培においてブドウの開花、熟成は順調であったが長雨と猛暑による病害が現れた地点もある。落下を逃れたブドウについては、糖度16のブドウが得られた。一方、標高600 mの圃場において、ウイルス非感染甲州ブドウ樹から今年度初めて収穫できた。糖度は19であった。同じ圃場で生育したウイルス感染甲州ブドウ樹から収穫したブドウは、糖度16であった。ウイルス非感染ブドウの方が、より高い糖度のブドウが得られる事を実証した。圃場での収穫は気候に左右されるため、対策が必要であり、今後の課題である。ウイルス非感染ブドウの収穫量がまだ少ないため、果汁の化学分析の正確な解析とワイン試験醸造がまだできていないこと、また、成果の公表が予定よりも遅れている事から、研究段階としては、やや、遅れている状況である。
第一に、ウイルス非感染ブドウ苗の新たな圃場での栽培を複数の県でスタートしたので、収穫を期待する。第二に、収穫ができれば、糖度、グルコース-フルクトース比、リンゴ酸濃度、総ポリフェノール量に関してより正確な果汁の分析が可能となる。また、ワインの試験醸造を行い、ワインの化学分析を行う。これまでの成果についてまとめ、論文を公表する。
コロナ禍に伴う,学会のオンライン開催による旅費の使用予定取り消しが主な理由である。投稿中、及び、投稿準備中の論文原稿について、英文校閲料、論文投稿料等 として支払う予定である。
Tsutsumiuchi K. et al.,2021 Journal of Agricultural and Food Chemistry 誌69巻13号のカバーアートとなった。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (5件)
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