研究課題
甲州種は、ゲノムの約3/4がヨーロッパ種Vitis veniferaであり、優れたワインができると期待されている。さらに柚子の香りがする甲州種の白ワインは最も和食に合うワインとして、世界的にも着目されている。また、ワイン法が2018年から施行され、日本ワインへの期待が高まっている。しかしながら日本の醸造用のブドウの多くはウイルス感染しており、糖度が上がらず、熟成度が低いため、深みのあるワインには至っていない。特に、甲州種は、ウイルス除去のための成長点培養の成功率が極めて低く、現在我々のグループだけが培養条件を確立することができ、2022年論文発表した。2023年度は、基盤的研究に加え、社会実装に向けて、ウイルス非感染甲州による試験醸造のスケールを上げることを目標とした。第一に、成長点培養において新規なオーキシンを用いた発根条件と土への移植の条件を確立した(論文投稿準備中)。第二に、ウイルス非感染樹を温室と圃場で栽培し、約5 kgのブドウを収穫、ワイン醸造を行い熟成中である。第三に、葉がカールする分子メカニズムについて研究し、Plants誌に発表、引き続きウイルス感染などのストレスとの関連性について研究している。第四に、6年前にウイルス非感染甲州樹を圃場に移植した中部大近郊圃場と山梨県の圃場の樹のウイルス検査を行った。その結果、中部大学の樹は7種のウイルスに非感染であることが確認された。一方、周囲に感染樹がある山梨県の圃場で栽培した樹は、葉巻病ウイルスに感染していることが判明した。ウイルス非感染を保持するには周囲に既存のブドウ圃場がないことが重要な条件である。第五に、中部大温室において約200本のウイルス非感染苗を作成し、それらのうち20本を甲州に最適な気象条件にあり、かつ周囲にブドウ栽培圃場がない静岡県富士宮市の新たな圃場(標高700-800m)に移植し栽培を開始した。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)
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