研究課題
本研究は、東アジア食文化で重要な位置を占め、農書など歴史史料に記載が多いアブラナ科作物を研究材料とする。アブラナ科作物は世界各地で栽培され、東アジアの米主食文化圏では中心的副食で、近年ではこれらの品種の保存を通じ、遺伝的多様性の重要度への認識が高まっている。本研究では、公刊の歴史史料や地方文書等から、品種・栽培技術・栽培環境に関する情報を収集し、過去の品種の形態的特徴や栽培方法を人文学的側面から把握するのと、現品種にどの形質が受け継がれ、どの形質が選抜の過程で失われたかという問題や、現存品種間の交雑、遺伝解析、各作物が持つゲノムが環境、肥培管理から受ける要因を、比較ゲノム等の手法により、農学的・植物学的な理解を行い、最終的に文理融合による解釈から、アブラナ科作物品種の歴史的変化を踏まえた将来の農資源の在り方、多様性を理解することを目的としている。2020年度は、国内外での調査や研究会合を計画していたが、折からの新型コロナ蔓延という社会情勢のために、そのほとんどが実施できなかった。ただし、研究班内での研究交流については、オンライン方式によって何とか複数回開催をしたが、様々な制約等もあり、本来想定していた交流活動には及ばない面はある。それから、農学分野での論文、アウトリーチ活動については、様々な制約が存在する中で、可能なものは対応することができている。また、人文系分野では、京都の近世文書の分析作業も実施し、その見解については、年度末にオンライン方式で開催した研究会議において報告を行い、研究班内でも議論し、成果情報の共有を図った。
3: やや遅れている
2019年度には、一般向けの教養書として成果物を刊行することができるなど一定の進展があったが、2020年度は年度当初から新型コロナウイルスの蔓延という社会情勢もあり、予定していた国内外での調査のほとんどが実施することができなかった。加えて、研究班の各研究者もそれぞれの所属機関などからの活動規制、担当する教育関係の業務において、負担が大きくなったこともあり、最終的に研究活動に避ける時間・労力が僅少となった。ただし、こうした情勢下でもアウトリーチ活動については、諸方面の教育機関からの依頼等が多数あり、可能な範囲で農学分野の研究者が担当してきている。
2021年度は、2020年度の遅滞を回復するべく、研究班内でも協力・連携を密にして対応をしていく予定であるが、現段階でも社会情勢の大幅な好転などが見通せない様相にあり、予断を許さない状況と認識している。具体的には、年度後半より社会情勢を見つつ、徐々に国内調査から再開してゆきたい。また、近世地方文書の整理については、計画的に進捗させていく予定にしている。
2020年度に発生した新型コロナウイルス蔓延のため、予定していた国内外での調査や研究活動等が実施できなかったことや、研究班の各研究者が所属機関において他の業務の負担が増加したことで、調査・研究の従事に避ける時間・労力が僅少となり、結果として予定していた予算の執行ができなかった。2021年度については、社会情勢等をみつつ、国内調査から再開することとしする。また、遺伝子解析や栽培実験等についても条件が整い次第適宜再開し、関連する予算を執行していく予定である。
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