研究課題
本研究は、東アジア食文化で重要な位置を占め、農書など歴史史料に記載が多いアブラナ科作物を研究材料とする。アブラナ科作物は世界各地で栽培され、東アジアの米主食文化圏では中心的副食で、近年ではこれらの品種の保存を通じ、遺伝的多様性の重要度への認識が高まっている。本研究では、公刊の歴史史料や地方文書等から、品種・栽培技術・栽培環境に関する情報を収集し、過去の品種の形態的特徴や栽培方法を人文学的側面から把握すること、現品種にどの形質が受け継がれ、どの形質が選抜の過程で失われたかという問題や、現存品種間の交雑、遺伝解析、各作物が持つゲノムが環境、肥培管理から受ける要因を、比較ゲノム等の手法により、農学的・植物学的な理解を行い、最終的に文理融合による解釈から、アブラナ科作物品種の歴史的変化を踏まえた将来の農資源の在り方、多様性を理解することを目的としている。2021年度は、国内外での調査や研究会合を計画していたが、折からの新型コロナ蔓延という社会情勢のために、そのほとんどが実施できなかった。ただし、研究班内での研究交流については、オンライン方式によって何とか複数回開催をするにとどまった。他方で、文系側研究者らは、日本史史料に見える記事の収集作業を実施し、データ整理も併せて行い、さらに近世京都の史料については、史料の釈読や校注作業も実施した。また、理系側研究者らは、農学分野での論文発表、アウトリーチ活動を適宜開催するなどの活動を展開し、コロナ蔓延下の状況でできる範囲での活動を実施した。
3: やや遅れている
2019年度には、一般向けの教養書として成果物を刊行することができるなど一定の進展があったが、2020・2021年度は年度当初から新型コロナウイルスの蔓延という社会情勢もあり、予定していた国内外での調査のほとんどが実施することができなかった。加えて、研究班の各研究者もそれぞれの所属機関などからの活動規制、担当する教育関係の業務において、負担が大きくなり、その状態が2021年度も継続したこともあり、2020年度同様に、研究活動に避ける時間・労力が僅少な状況が続き、遅延の主たる要因となったことは否めない。ただし、こうした情勢下でもアウトリーチ活動については、諸方面の教育機関からの依頼等が多数あり、可能な範囲で農学分野の研究者が中心となって担当した。
本来であれば、2021年度で終了の予定であったが、計画がやや遅れていることに鑑み、2022年度に延長して研究を実施する。これまでの遅滞を回復するべく、研究班内でも協力・連携を密にして対応をしていく予定である。社会情勢的には、寛解の様相も見え始めていることから、今後は状況の推移に留意しつつも、当初から想定していた計画に復帰する方向を模索し、調査や成果とのまとめの各作業を進捗させていく予定にしている。
コロナ蔓延等により計画がやや遅れていることから、全般に支出が次年度送りになった点があり、今後は成果のとりまとめの中で、適切に執行することを予定している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 図書 (2件)
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