研究課題
本研究は、東アジア食文化で重要な位置を占め、農書など歴史史料に記載が多いアブラナ科作物を研究材料とする。アブラナ科作物は世界各地で栽培され、東アジアの米主食文化圏では中心的副食で、近年ではこれらの品種の保存を通じ、遺伝的多様性の重要度への認識が高まっている。本研究では、公刊の歴史史料や地方文書等から、品種・栽培技術・栽培環境に関する情報を収集し、過去の品種の形態的特徴や栽培方法を人文学的側面から把握すること、現品種にどの形質が受け継がれ、どの形質が選抜の過程で失われたかという問題や、現存品種間の交雑、遺伝解析、各作物が持つゲノムが環境、肥培管理から受ける要因を、比較ゲノム等の手法により、農学的・植物学的な理解を行い、最終的に文理融合による解釈から、アブラナ科作物品種の歴史的変化を踏まえた将来の農資源の在り方、多様性を理解することを目的としてきた。2022年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症の蔓延という社会情勢のため、従来計画していた調査活動のほとんどは実施できなかったが、研究班内での研究交流については、オンライン方式によって何とか複数回開催を行った。さらに、本年は最終年度となるため、これまでの研究活動の成果とりまとめ作業を行った。まずは、文系側研究者らが中心となり、日本史古代・中世史料に見える記事の収集作業を実施し、データ整理を行ってそれを内部検討用の冊子としてまとめ、今後の後続研究活動に資するものとしたほか、足掛け4年間にわたり研究と分析を行ってきた近世京都の錦小路青物市場に関する史料については、理系側研究者らの各種の助言・支援なども得て、翻刻と解題を付した報告書としてまとめ、刊行し、関係の研究機関にも贈呈することができた。
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