研究課題/領域番号 |
18KT0056
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
南齋 規介 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (80391134)
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研究分担者 |
森岡 涼子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業情報研究センター, 主任研究員 (90415323)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 国際貿易 / 持続可能な開発目標 / クリティカルメタル |
研究実績の概要 |
本年度は,国際貿易を通じて国や地域の間を移動する金属量を対象に,国際貿易データ(BACI)の最新データを利用して推計対象年を延長し,1995年から2016年までの推計に着手した。対象とした金属はその経済的重要性と供給リスクの高さからクリティカルメタルと称される金属の中でも,永久磁石に用いるネオジム,リチウムイオン電池に必要なコバルトに注目した。国や地域間の金属移動量の推計は,各国や地域ごとに対象金属のマテリアルバランスを制約とした最適化計算によって最終的な金属フローの調整を行うが,その方法論を改良し,最適化後の貿易商品中の金属含有量の妥当性を高めた。 一方,金属の国別採掘量を国際貿易により輸出される金属フローを説明変数として推計する回帰モデルの開発を始め,将来の金属フローの変化に対応した採掘量の算定を開始した。開発モデルはリッジ回帰を基礎とし,学習データとして被説明変数には1995年から2016年までの地金ベースの採掘量,説明変数には金属採掘国の貿易商品別の金属フローを用いる。 また,金属資源の持続可能性を評価するため,各国の金属資源の利用と国連の持続可能な開発目標(SDGs)との関係を分析した。具体的には,各国の金属資源利用の変化を物質フロー指標の一つであるDMI(Direct Material Input:直接物質投入量)で観測し,それと世界銀行の提供するSDGsの評価項目に対応する各種指標値との相関性を確認した。その結果,金属資源のDMIの増加が指標の悪化と統計的に有意に相関した事例が発見され,将来的な金属資源の利用増加がもたらすSDGsへの負の影響についてディカップリング(分離)を進める必要性が認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,国際貿易に伴う金属資源フローの時系列拡張を中心に,各国の対象金属に関するマテリアルバランスを制約式とした最適化計算によるフローの調整方法などの改良を図り,最新のデータの取り込みと信頼性の向上を図った。また,金属フローから金属採掘量を推計するモデルの開発への着手とその試行計算による結果の妥当性を鑑みると,着実に有用なモデルの構築が進んでいると考えられる。また,金属資源の持続可能性評価の巨視的方法で実施し,研究を構成する要素が並行して進展させており,進捗は概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,国際的な金属フローと連結するため国内サプライチェーンデータを最新年のデータで整備を行い,人工知能の利用拡大に関するシナリオ分析を可能にする方針とする。特に,医療や介護分野や見守り,安心・安全を支援する分野での利用拡大を通じた金属資源の増加に注目するが,新エネルギー技術の普及など他の需要に伴う金属資源の増大の影響についても調査し,本研究のシナリオ分析の金属資源需要に対する寄与を定量的に明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の所属機関の異動があり,研究課題継続の承認や研究分担金の移管などの手続きが必要であり,出張に関する旅費や計算ソフトのライセンス購入などの消耗品の支出を控えることになったため,次年度使用額が生じた。国際学会への参加やライセンス費用の価格改定やツールオプションの追加などに費用充当し,円滑な執行を行う。
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