研究課題/領域番号 |
18KT0058
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
藤崎 和弘 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435678)
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研究分担者 |
横田 秀夫 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (00261206)
伊藤 大雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00333716)
森 洋 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (20631493)
森谷 慈宙 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (30539870)
田中 紀充 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (40559259)
石田 祐宣 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60292140)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 負荷計測 / 果樹栽培 / 雪害 / 農工連携 |
研究実績の概要 |
本研究では、果樹が環境から受ける力学負荷の解析と、折損被害予測、実環境下で樹の変形を長期測定するための計測システムの開発を行う。また、果樹の枝折れ被害が多く発生する融雪期の負荷形態を調査するため、「雪の様態変化」を、雪自体の観測のみならず、埋没下にある樹木枝の経時変形計測と、幹枝の力学解析を利用することで、逆解析的な観点に基づいて明らかにする。 本期間においては、①枝折れ被害の多い台風時期と、果実重量の作用する収穫期、積雪被害をもたらす降雪から融雪にかけての冬期について、果樹枝の変形状態の観測を行い、各時期における負荷の作用形態を推定した。②遠隔でのモニタリングが可能な屋外設置型のひずみセンシングシステムを構築し、実験農場の樹枝に設置することで、冬期に長期間にわたる枝の負荷計測を実現した。このシステムにより融雪期に雪の移動に伴って負荷が増加することを確認した。③実形状計測に基づく枝の力学解析モデルを作成し、積雪下における枝の変形状態から沈降負荷の作用形態を予測するシステムを構築した。④変形機能を有する素材を利用し、雪の沈降現象を再現するモデル実験を可能にした。 以上、実際の果樹枝を利用した実験と力学解析の両側面から、樹枝に作用する負荷と変形についての知見が得られた。また、果樹の負荷計測に利用可能な各種計測システムの構築と、実環境計測における課題抽出、その対策と試行実験を行っており、長期にわたる果樹の負荷計測が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、実形状計測に基づく果樹枝の力学モデルの構築と、様々な負荷条件下での力学解析を実現している。一方、今期、弘前近隣地域においては、降雪日が分散していたため、積雪量がそれほど多くなく、融雪期の果樹被害も少なかった。そのため、冬期の枝折れの実態調査に際しては、十分な観察例は集まっていない。そこで、本期間は東北地区の各県で実際に栽培されている様々な樹形を調査し、耐雪性を評価した。また、今期は台風の被害が懸念されたことから、果樹の生育を考慮した枝の力学モデル構築を先行して行い、強風による折損リスクについて検証した。
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今後の研究の推進方策 |
今期は果樹枝の力学モデル作成と、様々な負荷条件下での変形解析、折損リスクの調査を実施した。次期はこの解析の妥当性を実測に基づいて評価し、物性分布や、詳細な形状計測からモデルの高精度化を行う。今後、力学解析をベースに風や雪による負荷の作用形態を明確化していくことで、支柱入れや吊りなど、各時期に有効とされてきた手法の評価や、より効果的な負荷軽減法について検討する。また、機能性材料を利用した雪の沈降現象再現が実現したことから、雪のない時期においても積雪沈降を模擬した実験が可能になった。今後は雪の様態変化の解析を通じて未知現象の解明にも挑戦していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期は積雪時期がずれ、雪害実例の観察と解析結果の実験的検証など成果公表に必要な実証データの取得に時間を要したことから、予定していた学会の参加や研究会の実施を見送っている。先行して解析ソフトウェアの拡張や計測システムの設計を行っており、現時点で成果の検証も進んでいることから、次年度の早い時期に、より専門性の高い学会に申し込み成果を公表する予定である。
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