研究課題
風力エネルギーの有効利用促進のため、新しいコンセプトの風力発電システムの開発を行った。全世界的に風車は大型化を続けてきたが、ブレードの長大化に伴い、風車開発や社会受容性の問題が深刻化している。これらの問題にブレイクスルーを与えるためには、シングル(単基)の大型風車をさらに大型化させようとする発想を転換し、世界最高レベルの性能をもつ風車を多数集めてクラスタ構造とすることが有効である。複数の風車を並列配置するマルチロータシステムに、世界最高レベルの発電効率と静粛性、防雷性、防バードストライク性を併せ持つ、レンズ風車を採用すると、流体力学的な相互作用により、集合させることによって互いに出力性能を高めあう。本研究では、マルチロータシステムのレンズ風車(マルチレンズ風車)の空力的干渉現象を明らかにし、その最適配置を提案することを目的に、風洞実験と数値計算を実施した。前年度までに、クラスタ化した際の個々の風車の出力増加と抗力(推力)増加には一定の関係(3乗2乗則)があることが分かり、実験モデルを小型化し、ブロッケージ効果を最小限に抑えながら、最大7基のマルチロータシステムの風洞実験を実現した。風洞実験の結果、レンズ風車をマルチローターシステム化した場合には、基数を増加させるほど、ローター面積当たりの出力性能を増加させられることを明らかにした。これは、風に対して同じ投影面積の風車を設置する際には、大型の風車を1基設置するよりも、小型の風車をより多数クラスタ化して設置したほうが高い発電能力が得られることを意味する。数値計算より、これは風車間のGAPフローの効果であることを明らかにした。また、この効果は、レンズ風車を主流方向にずらして配置するスタガード配置の場合でも有効であることを明らかにした。これはマルチレンズ風車が、空力弾性、および構造強度面からの要請にも柔軟に対応できることを意味する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1618 ページ: 032017~032017
10.1088/1742-6596/1618/3/032017