研究課題/領域番号 |
18KT0064
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研究機関 | 福島県環境創造センター |
研究代表者 |
高橋 勇介 福島県環境創造センター, 研究部, 副主任研究員 (70792547)
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研究分担者 |
西村 正樹 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (00416249)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 除染廃棄物仮置場 / 高分子資材 / 劣化メカニズム / 耐候性大型土のう / ジオシンセティックス / ベルト引張試験 / 赤外分光分析 |
研究実績の概要 |
本研究テーマの目的は、福島県内の除染廃棄物仮置場で使用されている高分子資材、特に除染廃棄物の保管容器(耐候性大型土のう)の長期耐久性についてその劣化メカニズムを明らかにし、仮置場や除染廃棄物の管理に資する知見を発信することである。平成30年度の主な実施内容は、(1)吊ベルトの引張試験、(2)化学分析(赤外分光分析等)、(3)劣化再現のための室内促進曝露試験 の3つである。 (1)まず、保管容器の輸送で特に問題となるのが容器吊上げ時のベルト破断であることから、保管容器吊ベルトの引張試験を実施した。その結果、仮置場で実供用された一部の吊ベルトは供用2年で引張強さが基準値未満に低下していることが分かった。一方で、保管容器の品質規格に使用される紫外線促進曝露試験では10年相当の負荷を与えたにもかかわらず強度低下は限定的であった。このことから、促進曝露試験が現実の保管容器劣化速度を再現できてないことが明らかになった。 (2)次に、赤外分光分析を実施したところ、仮置場での実供用されたベルトは(強度低下が激しいにもかかわらず)明確な化学変化の傾向が見られず、新品ベルトの分析結果とほとんど差が見られなかった。一方で促進曝露試験を実施したベルトは(強度低下は原的であるが)表面酸化劣化の兆候を示した。このことから、屋外仮置場で実供用されたベルトと室内促進曝露したベルトでは劣化メカニズムが異なる可能性が明らかになった。 (3)仮置場における資材の急速な劣化を再現し劣化メカニズムを明らかにするため、仮置場内で大型土のうを移動させる際に吊りベルトに加わる荷重の履歴を考慮し、引張り予荷重付与後の室内促進暴露試験に着手した。試験結果の確定は31年度の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマで優先的に実施する必要があるのが、保管容器ベルトの引張試験である。福島県の仮置場では一部の保管容器ベルトの破損が除染廃棄物の輸送計画に支障を与えるケースが報告されており、実際の力学的強度を調査することは行政の観点から見ても重要度が高い。30年度の試験業務の結果、仮置場で供用された保管容器ベルトに加えて、日本工業規格で規定されている室内促進曝露で劣化させた保管容器ベルトの評価も実施できた。これにより、仮置場の保管容器の劣化速度が室内促進曝露から想定される速度を大きく上回っていることが明らかになった。 現在は、これらの結果を基に劣化再現試験に着手している。30年度に明らかになった資材の力学的強度を基に、資材強度の低下に寄与した要因(温度・ひずみ等)を特定する予定である。劣化再現試験に必要な実験条件は概ね明らかになっており、早ければ31年度、遅くとも32年度迄には仮置場における高分子資材の劣化メカニズムを明らかに出来ると考える。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は、引き続き劣化再現試験および劣化メカニズムの解析を実施する。まず、劣化再現のための室内促進曝露試験の評価を進め、仮置場における資材の劣化要因の特定を目指す。また、赤外分光分析に加えて熱分析(DSC等)を実施し、高分子資材の劣化状態をより詳細に解析する。研究成果については、学会等で発信する予定である(GEE2019(5/30-31、カナダ、モントリオール)にて英語論文を投稿し受理された。その他、プラスチック成形加工学会等での発表を予定)
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究テーマでは、研究代表者と研究分担者が相互の所属機関(福島県と大阪府)を訪問し主な打ち合わせや試験業務を実施している。1回の訪問で複数の試験業務をまとめて実施することで、当初必要と考えていた以上に試験業務を効率的かつ低費用で実施できた。その結果、物品費(引張試験に用いる器具等)や旅費について、30年度の使用額は想定より少額となった。 31年度は国際学会への論文投稿および学会発表を予定しており、研究代表者と研究分担者の打ち合わせ(福島~大阪間の移動)の回数も30年度より増える予定であることから、差額の発生は30年度に比べ少額になると考える。
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