研究課題
初年度は大腸炎モデルである樹状細胞特異的TGFbR2ノックアウトマウスを用い、肝内胆管の炎症と糞便中のEnterobacteriaceae科の細菌の増加を確認した。この腸炎および胆管炎における自律神経刺激の影響を検討するためにアセチルコリン受容体刺激薬を投与し、大腸の炎症細胞浸潤、杯細胞減少は減弱と、肝内胆管の炎症の不変を確認した。次に硬化性胆管炎発生モデルであるKRT19陽性細胞誘導性CDH1ノックアウトマウスを用いて抗生物質の影響を検討し、糞便中細菌数の減少、胆管周囲の炎症細胞浸潤、線維化の減弱を認めた。またTNFa、IL-6などの炎症性サイトカインの発現低下も認めた。次年度は胆管上皮細胞と腸内細菌叢の関連について検討し、KRT19陽性細胞誘導性CDH1ノックアウトマウスでは胆管上皮細胞におけるMAPKの活性化と上皮幹細胞マーカーCD44の発現増加を認めた。この変化は抗生剤投与によって抑制された。また胆管周囲の炎症細胞浸潤についてFCMで検討し、野生型に比べ著明なリンパ球の増加がみられ、抗生剤投与によってほぼ前値に回復した。最終年度は胆管上皮再生に関連するサイトカインであるIL-33の影響を検討した。IL-33の腹腔内投与により肝内胆管の増生と著明な炎症細胞浸潤がみられたが、大腸では上皮細胞の増殖、炎症細胞の増加もみられなかった。このIL-33による胆管上皮および肝内の炎症細胞浸潤は抗生剤の投与によっても改善を認めなかった。またマウス胃炎モデルにおけるサイトカイン発現と上皮細胞の変化についても検討した。これらより胆管炎には腸内細菌叢依存的、自律神経非依存的に制御された胆管上皮細胞のMAPK活性や幹細胞マーカーの発現増加が関与している可能性が示唆された。
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Microorganisms
巻: 8 ページ: 1-20
10.3390/microorganisms8121995