研究課題
体内時計は、行動、睡眠、および代謝といった多様な生理機能に観察される約24時間の周期変動を作り出す 地球上のほぼすべての生物に存在する生体の恒常性維持機構である。この機構は、生物の組織を構成する個々の細胞に存在する日周性を持つ転写機構(細胞時計)により制御される。そのため、脳組織に存在する中枢時計と各末梢組織に存在する末梢時計からなる階層構造系として存在する。正常な体内時計の形成には、1)細胞時計が光刺激に応答し、組織内で互いに同じ時刻に同調し組織レベルの時計を形成すること、および2)各組織レベルの時計の時刻関係(位相関係)が適切に維持されることが必須である。本研究は、既に作出済みの細胞時計の組織内同調が破綻した遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて、課題1:細胞時計が生体組織内で互いに同調する機構、課題 2:中枢時計と末梢時計と位相関係の維持機構を解明することを目的としている。今年度の研究は、独自に作出した細胞時計の組織内同調が破綻し、光依存的な行動リズム形成に異常を呈する遺伝子改変ゼブラフィッシュ(zPer2/zCry1a double KO個体)を用いて、サプレッサースクリーニングを行った。具体的には、稚魚の行動リズムを指標にして、1600種類の機能既知の化合物からなるライブラリーからzPer2 /zCry1a DKO個体の行動リズムの光依存的な形成を回復させる化合物を選定を行った。その結果、数種類のDKO個体の行動リズムの形成を回復させる化合物を選定することに成功した。また、選定した化合物の標的分子のKO個体の作出を進めた。さらに、中枢時計と末梢時計を個別に可視化できるトランスジェニックゼブラフィッシュの作出を進めた。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的の一つであるDKO個体の行動リズムを回復させる化合物の選定ができている。また、中枢時計と末梢時計の位相関係を可視化するために必要となる遺伝子改変ゼブラフィッシュの作出が進んでいる。
zPer2/zCry1a DKO個体を用いたサプレッサースクリーニングを継続するとともに、これまでに本スクリーニングにより選定した化合物の標的分子の遺伝子改変個体の作出と行動リズムの解析を行う。また、中枢時計と末梢時計の位相関係を可視化するために必要となる遺伝子改変ゼブラフィッシュの作出を進め、作出でき次第、その個体を用いた中枢時計と末梢時計の位相関係に影響を与える化合物の選定を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Sci. Rep
巻: 9 ページ: 196
doi: 10.1038/s41598-018-37879-8
Oncogene (Edited by Pinar Erkekolu) InTechOpen
巻: IntechOpen2018 ページ: 1-15
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