生体にストレスが負荷されると、様々な生理応答が起き、恒常性の維持を保つシステムが作動する。しかし、小胞体への折り畳み不完全なタンパク質の蓄積によって生じる小胞体ストレスにより惹起される生体のストレス応答システムに関しては、未だ不明な点が多く残されている。昨年度までの研究結果より、細胞から細胞外に分泌される小胞の一つであるエクソソームには、小胞体ストレス関連遺伝子であるスプライスド型のXBP1 mRNAが含まれる可能性が示された。スプライスド型のXBP1は、小胞体ストレスセンサータンパク質であるIRE1αの活性化によりXBP1のmRNAレベルでのスプライシングが惹起されることで生成される。したがって、小胞体ストレスによってIRE1αが活性化されるとスプライスド型のXBP1の生成量が増加し、スプライスド型のXBP1のエクソソームへの取り込みが増えることで、小胞体ストレスシグナルがエクソソームを介して伝達される可能性も考えられる。そこで、これらの実験結果に関連して今回は、小胞体ストレス負荷したマウスの血液中において、発現変動のある因子の探索を試みることとした。小胞体ストレス負荷は小胞体ストレス誘起試薬であるツニカマイシンを腹腔内投与し小胞体ストレスを誘導させ、24時間後の血液中において発現変動するmiRNAのレベルを網羅解析スクリーニングシステムにて検討した。その結果、いくつかのmiRNAにおいて小胞体ストレス誘起試薬の処理で誘導もしくは抑制される可能性を示すデータが得られた。そこで今後、これらの因子の発現について確認すべく、個別に設計したmiRNA用のプライマーを用いたqPCRアッセイによる確認を行なう予定である。
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