研究課題
本研究のテーマは心機能制御の中心としての交感神経である。神経シナプス末端から分泌されたノルアドレナリンが、心筋膜表面上のベータ受容体に結合して、刺激性G蛋白質を活性化する。G蛋白質はアデニル酸シクラーゼ酵素を刺激して、ATPを基質にセカンドメッセンジャーcAMPを産生する。心筋細胞内cAMPの上昇は、L型カルシウムチャネルをはじめ、フォスフォランバンなどの収縮関連蛋白をリン酸化し、カルシウムの細胞内流入が増やすとともに、収縮蛋白のカルシウム感受性を増す。本申請では、交感神経による機能制御として、心筋細胞におけるカルシウムとcAMPシグナルの数理的な制御解析を対象として、不整脈に代表される循環制御における恒常性の破たんを数理科学的に予測するシステムとして検討を進めた。我々が過去四半世紀にかけて積み上げてきた薬理学的かつ分子生物学的実験などの結果を、複雑系の数理科学的な概念と方法で統合し、不整脈をはじめとする疾患モデル解析に統合をすすめた。とくにこれまで独立した研究対象となってきたcAMP産生機構とカルシウム調節機構を、数理科学モデル研究において生体システムとして統合し、不整脈予測モデルとしての応用を検討した。さらに両機構の主体をなすアデニル酸シクラーゼとその下流の分子、さらには電位依存性L型カルシウムチャネルに標的をあて、カルシウムとcAMPをメッセンジャーとして両者の活動が時間的・空間的にどのような制御を受けるのかを数理的に検証し、そのクロストークの乱れがホメオスタシスの破たんとなり、不整脈などの疾患発症となると考えている。とくに交感神経の過剰緊張や心不全時の圧負荷が重要と考える。我々の研究室では、時間空間的な物理因子に加えて、遺伝子発現あるいは欠損による酵素分子の量的変動を、薬理的な手法を駆使して細胞および個体レベルでの重要性を確認することができた。
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