研究課題/領域番号 |
18KT0075
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鶴田 幸恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (00457128)
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研究分担者 |
黒嶋 智美 玉川大学, ELFセンター, 助教 (50714002)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2023-03-31
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キーワード | 性同一性障害 / 精神医療 / 会話分析 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本年度も、性同一性障害のカウンセリング(面接)について分析を進めるのに、東京にあるメンタルクリニックにおいて収集した、臨床心理士ならびに精神科医と患者の面談(カウンセリング)の分析を進めた。具体的には、まず「ふつう」という発話のすべての個所をピックアップし、データコレクションを作成してあったが、その中から、その「ふつう」という発話が、ジェンダーと何らかのかたちで関わっていると考えられるもの、すべてをピックアップし直し、それらを、会話分析の仕方で詳細に書き起こしたものから、21のデータからなるコレクションを作成した。それらについて、今後、分析を進めてみることにした。 特に、アメリカ人類学会で行った発表では、それらのコレクションのデータを会話分析の手法で分析した。その中で、「ふつう」という表現を用いる「通常化」の手続きが、1)精神科医や臨床心理士による、ジェンダー規範に裏付けられた期待や想定、あるいは社会における「ヘテロノーマティヴィティ(Heteronormativity)」に対する抵抗であること、2)患者の異性愛でないセクシュアル・オリエンテーション(性的指向)を、社会的な基準を引用することで正当化する道具立てであることをそれぞれ明らかにした。 「ヘテロノーマティヴィティ」に関する知見に加えて、上記の実践が「性同一性障害のカウンセリング」のなかで行われていることから、トランスジェンダー研究において「トランスノーマティヴィティ(Transnormativity)」として取り上げられてきたものとの関連性も探究していく。今後、それらの観点から、分析の再検討を行う。また、それらの分析から「ふつう」という発話のデータコレクションの分析に戻り、性同一性障害のカウンセリングの特徴付けを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
取り扱っているデータがプライバシーを多分に含んでいたことから、匿名化した後、オンラインで研究会を行い、音声を聞く際には、おのおので繰り返し聞くというかたちで進めたが、本来のデータセッションからすると、進捗が得にくかった。
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今後の研究の推進方策 |
カウンセリングの録画・録音の中から、「ふつう」という発話が、ジェンダーと何らかのかたちで関わっているものすべてをピックアップし、それらを、会話分析の仕方で詳細に書き起こしたものから、21つのデータからなるコレクションを作成したが、それらについて、データセッションを繰り返し行い、分析を行う。特にヘテロノーマティヴィティやトランスノーマティヴィティという観点から知見を得ることを試みる。また、それらによって「性同一性障害のカウンセリング」の特徴づけを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大により、進捗が遅くなっているため。データセッションを行って、分析を進め、順次発表を行う。
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