研究実績の概要 |
2018年度および2019年度は、フィリピン、ミンダナオ島、ダバオ市にあるサマ・バジャウの集落でフィールドワークを行い、過去においてとくに重点的に調査をおこなった5つの家族(三世代)にたいして、筆者がその家族史について語り直しを行い、そのフィードバックをもらうというイベントを実施した。この際、過去に撮影した写真を使う想起法も併用した。このイベントそのものが本プロジェクトの目的であるが、筆者自身による成果物として、An Intimate Journey: Finding Myself Amongst the Sama-Bajau (Kyoto University Press+Trans Pacific Press, 2020)を刊行した。また、歴史的文脈の理解のため、Anthony Reidの著書を共同翻訳し、『世界史のなかの東南アジア』(名古屋大学出版会、2021)を刊行した。ほかに、フィールドワークに関して雑誌『東洋文化』(2020; 2022)の2冊を責任編集し、東洋文化研究所より刊行した。 2022年度(最終年度)は、ダバオ市渡航は可能であったが、いまだCovid-19の影響があり調査地に入ることは困難であった。そのため、Ateneo de Davao University(AdDU)に滞在し、上記の英語単著に関する学術交流を行った。また、筆者のサマ・バジャウ調査で20年以上に渡り、調査助手を務めてきたセブアノ人女性を対象にインタビューを行い、サマ・バジャウを含めたダバオ市沿岸部貧困層を支援するとはいかなる経験であるか記録に残す試みをした。その成果を、Harvard-Yenching Institute Working Paper Seriesとして4本刊行した。また関連して、AdDUの研究者3名とともに国際学会(東京)でのパネル発表を含め、3回の口頭発表を行った。
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