宗教言語の特徴を明らかにするため、古代メソポタミアの宗教的職能者アーシプによるいくつかの儀礼文書と、日本に古くから伝わる民俗信仰や神楽における祭文などを検討した。メソポタミアの儀礼研究に多くの時間を費やしたため、日本の儀礼については先行研究に依拠する部分が多かったが、異なる宗教言語の特徴を比較することができた。本研究により、儀礼の言葉は神が発する言葉ともとらえられ、現世や異界の創造に大きくかかわることが明らかとなった。病気治療や災禍に対する儀礼は、悪のない調和のとれた世界を作り出すことがその根底にあり、そこで唱えられる言葉、唱えごとには、行為遂行性(パフォーマティヴィティ)が認められる。
|