本研究は,子どもの日常生活技能の発達過程において,複雑にゆらぐ子どもの行為が群生環境の中でどのように方向づけられているのかを日常場面の縦断的な観察を通して理解することを目的とした.乳児の日常の食事場面の分析の結果、乳児が養育者の「手」に向ける視線と「顔」に向ける視線が異なる役割を担うことを示すとともに、乳児がスプーンを使うようになる過程において、(1)養育者による周囲の機会の調整と、養育者の手に乳児が向ける注意の結びつき、(2)乳児の行為に反応を示す養育者と、養育者の顔に乳児が向ける注意の結びつきという、養育者の行為と乳児の注意の間の二種類の双方向の結びつきが存在するという新たな知見を得た.
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