未利用バイオマスの有効活用は、これからの持続可能型社会を形成するうえで重要であると考えられる。そのような状況で、地球上に豊富に存在しながら利活用があまり進んでいない木質・草木バイオマスの有効活用は、バイオマス研究分野における重要課題のひとつであると考えられる。そこで本研究では、そのような木質・草木バイオマスのうち、リグニンを主なターゲットに設定した。リグニンの利活用が進んでいない大きな理由のひとつとして、リグニンの難分解性が挙げられており、リグニンを環境低負荷型プロセスで分解する方法論の開発が現在望まれている。そこで本研究では、同じく未利用バイオマスの一種である植物の緑葉部分や藻類などに大量に含まれるクロロフィル類を可視光応答型光触媒のリード化合物と位置づけ、それらの誘導体を利用した太陽光による環境低負荷型リグニン分解を目指した。そのためにまず、複数種の光合成生物から単離した天然クロロフィル類の誘導体化を行い、クロロフィル誘導体の吸収可能な波長領域や可視光励起一重項酸素発生に対する分子構造の影響を調べるとともに、クロロフィル類の分子構造改変を行うときの化学反応性の解析も行った。また、合成したクロロフィル誘導体の磁気ビーズへの固定化を実施し、得られたクロロフィル誘導体固定化磁気ビーズの可視光励起による一重項酸素発生効率やバイオマス分解への適用、ならびに反応溶液からの回収法と再利用に関して知見を得た。あわせて、リグニンを光触媒と共存させ、さまざまな反応条件で可視光照射を行い、リグニン分解やそれに伴うリグニンを電子源とする水素発生について検討した。
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