研究課題/領域番号 |
18KT0095
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
真野 昌二 基礎生物学研究所, オルガネラ制御研究室, 准教授 (20321606)
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研究分担者 |
金井 雅武 基礎生物学研究所, オルガネラ制御研究室, NIBBリサーチフェロー (30611488)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | チャ種子 / 耕作放棄地 / 油脂 / RNA-seq / 施肥 / バイオマーカー / 設楽町 |
研究実績の概要 |
都市への人口流入や農業従事者の高齢化により、中山間地域での耕作放棄地は年々拡大している。これらの地域の適切な管理は、地域社会の維持のみならず、生態系の保存、洪水や土壌侵食の防止等に重要である。地域社会と都市が共存する持続的社会を構築するためには、中山間地域にとって、独自性のある高い価値をもつ農産物を生産することが有効な方策の一つである。代表者らは、愛知県内で耕作放棄率の高い設楽地区の調査を行い、放棄された茶畑では、茶葉を摘み取られずに成長した茶樹が大量の種子を結実させていること、この茶種子が良質な油脂を含み、低刺激化粧品の原材料として最適であることを見いだした。本研究では、耕作放棄された茶畑のフィールド調査と、代表者らが確立してきた分子生物の解析技術を組み合わせ、下記の実験計画を推進することにより、省力で低コスト、低環境負荷を達成するための施肥管理技術を構築し、耕作放棄された茶畑を高品質な植物油である茶油生産の場として再利用することを目指す。 平成30年度は、施肥をしていない茶畑から経時的に(2018年9月、10月、11月、12月、2019年1月)サンプリングした種子からRNAを抽出し、RNA-seq用のライブリー作製を行った。また、現地調査を行い、2019年春以降の施肥を行う区画の設定と施肥の種類、回数など決定し、2019年3月より施肥を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択後すぐに本研究の協力者の杉浦氏と打ち合わせを行い、施肥の方法やチャ種子のサンプリングの回数などについて検討した。7月に交付内定の通知を受けたため、施肥を行うタイミングは既に過ぎてしまっており、本年度のサンプリングについては、まず施肥を行っていない、耕作放棄された茶畑由来のチャ種子を使って遺伝子発現パターンを検証することとした。チャ種子のサンプリングとRNA抽出は順調に行うことができ、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析用のライブラリーも作製が終了することができ、網羅的な遺伝子発現解析を行える準備を整えることができた。今後は、インフォマティクス解析によりチャ油脂合成に関わる遺伝子の探索を行う予定である。 また、2019年3月より施肥を開始し、それら試験区におけるサンプリングの状況も整えることができ、施肥の有無や種類による発現解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度にサンプリングした施肥を行っていないチャ種子における遺伝子発現解析を行い、チャ油脂合成に関わる遺伝子を同定する。2019年3月より開始した施肥によって、それら遺伝子発現がどのように変化するか、また蓄積するチャ油脂の量や種類がどのように変化するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は7月に内定通知を受けたため、研究の開始が4月でなく秋からとなった。チャの生育における施肥は春から夏にかけて行う必要があるため、本年度の施肥の実験は2019年度に行うこととなった。また、研究代表者は、平成30年4月より新たな研究室として「オルガネラ制御研究室」を主宰することとなった。それに伴い、平成30年12月より研究室の拡張を行うこととなり、工事が3月までかかってしまったため、RNA-seq解析用のライブラリー作製が3月末になってしまい、シーケンサーを使った解析は2019年4月以降となってしまった。そのため、平成30年度に使用予定であった経費の一部を2019年度に使用することで、本研究課題を効率的に進めていきたい。
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