研究課題
特別推進研究
今日、日本の有権者を取り巻く環境は、(1)選挙制度や政党システム、(2)社会・経済・国際的な構造、(3)重層的な情報環境、の変動によって、大きく変化しつつある。こうした変動期における有権者の意識や行動に関するデータを収集し、またその分析を通じてこれらの変動が日本の政治・社会にもたらす影響を明らかにする作業は喫緊の課題であり、今日これを行わなければ、そうした貴重なデータを得る機会も失われてしまう。こうした要請を受け、本研究は上記の3つの変動の中で有権者の投票行動がどのように変化しつつあり、またその変化がどこに向かっているのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、(1)との関連では、投票行動の規定要因にどのような変化が生じているのか、戦略投票が顕著に見られるようになってきたか、そうした変化は異なるレベルの選挙を通じて見られるか、またそれが政党間競争や政党システムのあり方に対してどのような影響を及ぼしつつあるのかを明らかにする。(2)との関連では、投票における各争点のウェイト、経済投票のセイリエンス、社会集団間の党派的分界線などを検討し、日本における政治的な対立構造の変容を明らかにする。(3)との関連では、マスメディア、パーソナル・ネットワーク、インターネットなどによる重層的な情報環境が有権者の意思決定にどのような影響を及ぼしているのか、また政党によるメディアの戦略的な使用と有権者の認知的な成熟とがどのような相互作用を生み出しているかを明らかにする。方法論的な柱となるのは、一般有権者を対象とする全国面接調査である。全国レベルで無作為抽出された対象者に対して、国政選挙時に専門の調査員が直接訪問して面接調査を行う。また非選挙時の政治意識に関する郵送調査も補助的に実施する。
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