研究概要 |
さまざまな官能基存在下に、1,2-ビストリフルオロメチルベンゾエート及びメシレート類をサマリウムアイオダイドで処理すると、速やかに還元的脱離反応が進行し、他の官能基を壊すことなく二重結合を導入できることを見出した。この反応を利用して、従来非常に困難であった9員環エンジイン系maduropeptinクロモフォアアグリコンの全合成に成功した。更に、C-1027クロモフォアコアー部の合成に成功した。特に、maduropeptinの全合成の課題は、4,13位二重結合とアトロプ異性の制御であった。上記方法によって、4,13位二重結合の(Z)-立体選択的導入に成功した。水酸基の保護を除去したアグリコンのアトロプ異性化は、室温で速やかに起きており、平衡が所謂天然型に偏って存在していることも判明した。いよいよmaduropeptinクロモフォア全合成に残された課題は、グリコシル化となった。また、C-1027クロモフォア合成に残された課題は、上記サマリウムアイオダイド反応でベンゾオキサジン部のエキソ二重結合の還元を如何に防ぐかとなり、来年度の課題である。カリブ海産C-CTXの左セグメントのKLHコンジュゲートをマウスに免疫し、左セグメントに結合するモノクローナル抗体を作成することに成功した。このモノクローナル抗体は、カリブ海産魚から得られたC-CTXを含む粗抽出物と反応することがELISA阻害実験によって確認された。また、ファージディスプレイ法により、抗CTX1B左セグメント抗体の改良を検討したが、成功しなかった。51-HydroxyCTX3Cの数ミリグラム単位の全合成を達成し、バイオプローブへの変換も可能になった。
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