研究課題
本研究では、(1)反陽子磁気モーメントの高精度決定とCPT対称性テスト、および、(2)反水素イオンの生成と反物質-物質間の重力相互作用、を目的に研究を進めている。当初7月末から9月末まで2ヶ月弱のビームタイムを得た。本年度のこの時期、CERNの反陽子減速器(AD)は不安定で、ビーム強度も弱かったが、反陽子蓄積器と陽電子蓄積器からカスプトラップへの粒子輸送を最適化し、カスプトラップ中での陽電子雲の回転圧縮・冷却や、反陽子集団運動の観測に世界で初めて成功した。ブレシア大(伊)グループと共同開発した3次元位置検出装置がほぼ順調に稼働するようになり、反陽子の消滅位置分布の時刻依存性を詳細に測定し、反陽子-陽電子混合から反水素が生成されるまでの時間をほぼ特定した。ADの問題に加えて、反陽子発生用プロトンシンクロトロンの故障と修理で実験中断が相次いだため、反水素生成の確認には至らなかった。そこでCERNと交渉し、例外的に2週間の追加ビームタイムを得た。これは、2ヶ月後の11月末からで、その間実験装置の全撤去と再設置という大規模な作業を伴ったが、11月末には無事実験再開にこぎつけた。装置の立ち上げ調整も順調に進んだが、今度はCERNの全所停電に見舞われ、実験装置のすべてと加速器群の再立ち上げ、再調整を強いられることになった。このため、追加ビームタイム中、反陽子二陽電子の混合条件の最適化、高励起反水素原子の電場イオン化法の高感度化等には成功したが、反水素生成の最終確認には時間切れとなった。オーストリアのグループと6重極超伝導スピン分析電磁石を共同開発した。このため、陽電子輸送ビームラインを新たに設計製作した。重力実験に必要な反水素イオン合成に向け、サッククレー研(仏)のグループと共同研究を進めている。超伝導ソレノイドへの陽電子蓄積を理研で、小型電子加速器による大最陽電子生成をサックレー研で、ポジトロニウムの高効率生成をCERNで同時並行的に進めている。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (11件) 備考 (2件)
Physics Letters B 685
ページ: 141-145
Nuclear Instruments and Methods B 267
ページ: 244-247
Physics of Plasmas 16
ページ: 100702-100705
Materials Science Forum 607
ページ: 263-265
Phys.Rev.Lett. 102
ページ: 085502(1-4)
Can.J.Phys. 87
ページ: 791-797
Rev.Sci.Instum. 80
ページ: 123701(1-9)
Eur.Phys.J.A 42
ページ: 343-349
http://radphys4.c.u-tokyo.ac.jp/
http://www.riken.jp/r-world/research/lab/wako/atomic/index.html