研究概要 |
コインシデンス運動量画像法用いて強光子場におけるアレン分子とブタジエン分子の水素マイグレーション過程を調べ、水素移動が、等価な炭素-炭素二重結合の切断されやすさを決めることが明らかとなった。水素マイグレーション過程の実時間追跡のため、差動排気中空ファイバーパルス圧縮器を製作し、搬送波位相を制御した数サイクルパルス(2mJ, 6fs, 200 mrad)の発生に成功した。また、強光子場中にある炭化水素分子の電子ダイナミクスと水素マイグレーション過程を、同時に、第一原理的に計算するための時間依存多配置波動関数理論を新たに定式化し、論文として公表した。提案した手法は、エチレンやメタノール分子などの(電子)+(プロトン)+(2つの重い原子核)から構成される様々な分子種を「二原子様分子」として統一的に取り扱う事が出来るという特徴を持つ。メタノール分子の構造最適化計算から。BO近似に基づく「古典的な分子構造」は、電子のスピン状態ばかりか、プロトンのスピン状態を明示的に考慮することで再現されることが、予備的な計算から判明しつつある。さらに、光電場内電子散乱法の実現のために製作した光電陰極型超短パルス電子銃の性能評価を行い、目標の性能を有していることを確認した。電子線シャドウグラフ法を用いて、生成した超短電子パルスの時間幅が約45psであることを確認するとともに、電子パルスと超短レーザーパルスとの散乱点における時空間的な重なりを位置精度<100μm、時間精度<3psで確保することができた。Xeを試料として、近赤外超短レーザーパルスによる光電場内電子散乱実験を行い、1光子吸収・放出した散乱電子の観測に初めて成功した。
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