研究概要 |
大脳認知機能マップに基づく単一神経細胞活動記録および局所神経回路の機能解析において大きな成果があった。大脳の異なる層の間の情報のやり取りを、16点多点電極によるmulti-spike同時記録によって解析し、記憶の記銘時にはII/III層からV/VI層へと情報が流れるのに対し、記憶想起時には逆にV/VI層からII/III層へと情報が流れることを発見した(Takeuchi et. al., Science 331, 1443-1447, 2011)。また、この実験では大脳6層構造内における記録部位を確定するのに電流源密度解析法を使用したが、他方、大脳皮質の各層に存在するニューロンの位置を決める新しい方法として、エルジロイ電極によって沈着させた鉄マーカーをMRIによって同定する方法を開発した(Koyano et. al., J. Neurophysiol. 105, 1380-1392, 2011)。また、単一ニューロン活動が行動の柔軟性にどのように寄与するかについて、頭頂葉ニューロン群の寄与を明らかにした(Kamigaki et al, J. Cogn. Neurosci. 23, 2503-2529, 2011)。これらの局所神経回路における情報処理が、大域的マクロ回路のよってどのように制御されるかについて、今後の解析の出発点となる機能結合についての知見を得た(Matsui et al., Cereb. Cortex 21, 2348-2356, 2011 ; Adachi et al, Cereb. Cortex in press, doi10.1093/cercor/bhr234,2012)。一方、Virus vectorによって遺伝子を発現させる方法の開発においては、ラットを用いて小脳プルキンエ細胞特異的に発現する遺伝子であるL-7プロモータを用いて血圧制御に成功した(Tsubota et al., PLoS One 6, e22400, 2011 ; Tsubota et al., Neuroscience, in press, doi,10.1016/j.neuroscience.2012,03.014, 2012)。以上のように、当初計画はほぼ順調に達成されたと評価している。
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