研究概要 |
Ca^<2+>-ATPaseに関しては、Ca^<2+>非存在下,Ca^<2+>に対し高親和性を示すE1状態を安定化する条件を見い出し、結晶化に成功した。この結果、ATPからの燐酸転移反応が何故2個のCa^<2+>の結合を必要とするのかを解明できよう。一方,ATPのTNP誘導体とE2P状態のCa^<2+>-ATPaseとの複合体の構造を2.6Åより良い分解能で決定し,TNPAxPはATPとは大きく異なった結合様式を持つこと、また、どうしてE2P基底状態でのみTNPAMPの強い蛍光が出るかを明らかにした。この結果はPNASに発表した。さらに,分子動力学計算から、カルシウムの結合が内腔側からの水の攻撃を防ぐ疎水性障壁を安定化していることを見い出し、PNASに発表した。一方,高等動物培養細胞を用いた組み換え体の大量生産も順調に進展し、ルーチンに0.5mg程度の精製標品を得ることが出来るようになった。この結果、変異体の結晶化実験を開始できた。さらに、マラリア原虫のCa^<2+>-ATPase (PfATP6)の発現にも成功した。 植物液胞膜由来のプロトンポンプであるPPaseに関しては蛋白質の精製方法、結晶化条件等の改良の結果、2.0Å分解能での構造決定に成功した。現在、原子モデルの精密化を行っている。PPaseはATPの代わりにピロ燐酸をエネルギー源とする独特な系であり、メカニズムも本質的に異なると考えられる。実際、得られた構造は全く新規なものであった。
|