研究課題
本研究は、計画研究エで行われる海底電位磁力計を用いた海底電磁気機動観測によって取得される海底MTデータを解析し、フィリピン海上部マントルの電気伝導度異方性を明らかにすることを目的としている。平成18年11月に西フィリピン海盆に3台の海底電位磁力計を約80kmの間隔で展開して開始した小アレイ観測は、本研究のために電気伝導度異方性を検出することに特化した観測である。これらの海底電位磁力計は平成19年11月の航海で無事回収し、1年分の海底電磁場観測記録を得ることができた。回収したデータをMT解析したところ、MTレスポンスの特徴は、3点とも等方的1次元構造では説明できないが、お互いが非常に類似していることがわかった。観測から得られたMTレスポンスは、海底下の電気伝導度構造のほかに、観測点周辺の海底地形と海陸分布による電気伝導度コントラストの影響を強く受けているが、海底地形・海陸境界効果を組み入れた3次元電気伝導度モデリングを行ったところ、それだけではデータの特徴を全て説明することはできないことが明らかになった。これは計画当初の予想通りであり、西フィリピン海盆下の上部マントル電気伝導度構造が横方向には不均質が小さいが、異方性によって非1次元的なデータの特徴がつくられている可能性を示す。今後の解析で上部マントル電気伝導度異方性を定量的に見積もる予定である。これまで電気伝導度異方性が観測から確認されているのは、海洋上部マントルでは中央海嶺近傍のみであり、形成から数10Maの年代を経た深海盆で確認されれば、海洋リソスフェア・アセノスフェアの運動と進化を制約する重要な情報となることが期待される。
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Conductivity Anomaly研究会論文集 (掲載確定)