研究概要 |
地震学トモグラフィーの手法により,詳細な地球内部での地震波速度分布の不均質性が明らかになりつつある。この観測結果は,地球深部での大規模な物質循環の存在を示唆している。この地球深部での物質循環の機構を解明するためには,下部マントル条件下での地球深部物質,特に弾性波速度などの熱的及び電子的性質を実験的に明らかにすることが不可欠であると考える。本研究課題では,地球内部の大規模循環を物質科学的に明らかにするために,レーザー加熱式ダイヤモンド・アンビル・セルを用いた高温・高圧発生技術と最先端の物性実験技術である放射光^57Fe核共鳴散乱法を組み合わせた新しい研究手法を開発し下部マントル領域における地球深部物質の電子構造、振動状態に基づき,その物質の弾性波速度や様々な熱力学的変数などの諸物性を決定する。 我々は,まず地球系惑星の深部物質の1つの候補である鉄硫黄化合物の中での科学量論的化合物FeSの高温・高圧状態での静的構造を放射光X線を用いた回折測定により決定した。その結果,2種類の新たな結晶相を発見した。さらに,それらの相は,温度に対してはクェンチ可能であることが分った。 室温、高圧力下^<57>Fe核共鳴非弾性散乱測定を行い,高温、高圧力下57Fe核共鳴非弾性散乱測定に最適化された加圧装置であるダイヤモンド・アンビル・セルの導入を行なった。さらに,高温・高圧力下での^57Fe核共鳴非弾性散乱測定を行うための課題のひとつであるBeガスケットの最適素材の選定を予備的な加圧実験により行なった。
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