研究課題/領域番号 |
19014003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30292262)
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研究分担者 |
松枝 宏明 東北大学, 仙台電波工業高等専門学校, 助教 (20396518)
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キーワード | 光応答 / 光誘起相転移 / X線分光 / 電荷秩序 / 軌道自由度 / 密度行列繰り込み群 / 遷移金属酸化物 / 強相関電子系 |
研究概要 |
1.多自由度秩序相における光照射効果:ペロフスカイト型マンガン酸化物を対象に、電荷秩序反強磁性絶縁体相における光照射効果について理論的解析を行った。ここでは拡張された二重交換模型を元に、時間依存動的密度行列繰り込み群法を用いて、光照射後の電荷、スピン状態の変化ならびに光吸収スペクトルの時間依存性を数値的に解析を行った。これにより光照射後に電荷秩序ギャップ内にスペクトル強度が出現し時間と共に成長すること、これが局在スピンの反強磁性相関の現象と連動していることを明らかにした。これらの数値計算の結果を元に、現実のマンガン酸化物における光照射効果の実験結果について考察を行った。 2.量子軌道模型における希釈効果:軌道秩序状態に軌道自由度を有さないイオンを導入するいわゆる軌道希釈効果が希釈磁性体と著しく異なる性質を示すことは以前の我々の研究と共鳴X線を用いた実験研究により明らかになっている。本年度の研究では以前の研究で考慮されていなかった量子効果が希釈軌道系に果たす役割を明らかにした。具体的には量子コンパス模型と呼ばれる2次元軌道模型を数値的に解析した。このために量子モンテカルロ法を軌道模型に適用できるようにアルゴリズムの改良を行った。数値計算の結果、希釈による転移温度の減少は希釈磁性体と比較して急激であること、しかしながら量子軌道系のそれは古典系の減少より緩やかであることが見出された。後者については軌道自由度特有な次元性の低下が量子揺らぎにより抑制された結果であり、「量子効果は秩序を破壊するという」通常の概念を覆すものであることを指摘した。
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