研究課題
圧力は、強相関電子系である遷移金属酸化物の物性を研究する上で、重要な外部パラメーターである。また、物性発現機構を研究する上で、核磁気共鳴(NMR)法は有効な測定手段であることはよく知られている。しかし、高圧下でのNMR実験においてこれまで汎用的に用いられてきたピストンシリンダー型圧力セルは、約3.5GPaまでの圧力しか発生できず、それ以上の圧力下でのNMR測定のためには新たな実験技術の開発が望まれていた。最近、我々の研究グループは、改良型ブリッジマンアンビルセルを用いて、室温で約10GPa、低温で約8GPaの超高圧下でのNMR実験に成功した。本研究では、このブリッジマンアンビルセルを用いた10GPa級高圧下NMR実験技術を確立し、遷移金属酸化物における新奇な高圧物性の探究を目指した研究を行った。前年度に引き続き、バナジウム酸化物で初めて発見された圧力誘起超伝導などの高圧物性が注目されている擬一次元導体β-Na_<0.33>V_2O_5に対して、ブリッジマンアンビルセルを用いた高圧下NMR実験を継続するとともに、ピストンシリンダー型圧力セルを用いて精密なNMR測定を約2GPaまで実施し、この系の温度圧力相図をより詳細に調べた。さらに、電荷秩序を伴った金属絶縁体転移を起こすことが知られているホーランダイト型バナジウム酸化物K_2V_8O_<16>を取り上げた。圧力下でのナイトシフトと核スピン格子緩和率の測定から、圧力によって金属絶縁体転移を抑制すると、新たな電子相が出現することを明らかにした。
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Phys. Rev. B 79
ページ: 081101(R)-1-081101(R)-4
http://i-ken.phys.nagoya-u.ac.jp/