研究概要 |
異常金属物質の代表である遷移金属酸化物は、高温超伝導や超巨大磁気抵抗効果、多重強秩序性など多彩な物性、機能を示し、これらの物性発現機構を解明し制御することを目的として、共鳴非弾性X線散乱(RIXS)による電子励起状態の観測、また最近発見された鉄系超伝導体を対象とした非共鳴非弾性散乱による格子振動の観測によって超伝導発現に重要な電子相関に関する詳細な情報を解析した。この結果、(LaSr)xNiO4,(LaBa)xCuO4で観測されている静的電荷の縞状構造(charge stripe state)からの電荷揺らぎと考えられる電荷励起状態の観測に初めて成功した。Charge stripe構造の周期に対応する運動量のところから発達する電荷励起を観測したもので、今後理論計算との比較により電子相関に関する定量的な議論や超伝導特性との関係が議論できるものと期待される。また、鉄系超伝導体:LaFeAO_<1-y>F_y,PrFeAsO_<1-y>を対象とした多結晶X線非弾性散乱による格子振動の状態密度観測を行った。第一原理計算との比較により、Fe-As結合が関わる格子振動のみ計算より約30%もバネ定数が小さいことが明らかとなった。この考察において、Fe原子に磁気モーメントの存在を考慮することによって実験との定量的な一致が得られることがわかり、スピン-格子相互作用の重要性が示唆される結果が得られた。
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