本研究は太陽系外の惑星を、すばる望遠鏡を使って直接撮像によって検出するための技術開発である。地球から見ると太陽系外惑星は極めて暗く、かつ明るい恒星のすぐ近くを回っているために、恒星の散乱光に埋もれてしまい検出が非常に難しい。この散乱光はスペックルと呼ぶ粒状の形状をしているが、これは星から来る光が地球大気の揺らぎによって波面が乱され、お互いに干渉することによって生じる。このスペックルは粒状のために、星との区別が付きにくいことが問題である。このスペックルは乱れた波面を高素子数の可変形鏡を用いて補正することによって低減することができる。平成20年度は実験室において、前年度までに開発してきた新しい半導体製造技術を利用した1000素子MEMS型可変形鏡を組込んだ試験装置を用いて、スペックル低減技術のアルゴリズム試験と性能試験を行い、系外惑星探査観測装置HiCIAOで必要とされている仕様を上回る性能を実現した。得られた結果としては、全散乱光を2e-7のレベルまで低減することができ、またコヒーレントな光に対する低減効果は1e-8にも達した。この結果は査読論文に投稿中である。 また、実際の天体観測用のシステムとして、HiCIAOに組みこむMEMSスペックル低減装置の設計開発し、性能試験を行った。最終的なすばる望遠鏡への組み込みは、これと組み合わせて用いる究極補償光学系システム、HiCIAO用支持機構、制御ソフトウェアの完成を待って行い、2010年の観測開始を予定している。
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