研究概要 |
卵細胞や細胞などの生体微粒子の操作は, 畜産業やバイオ産業など様々な分野で必要不可欠である. 接触操作ではツールの位置決め作業が煩雑で, 外乱や不純物の混入が問題となっており, 高速で高効率なシステムは実現が困難である. 一方, 閉じた空間で微小物体を操作する非接触マニピュレーションは, 溶液の蒸発やピペットの運動による外乱を防ぎ, 高速で高効率なシステムを実現するうえで基盤技術となる. 本研究では, (1)磁場もしくは(2)レーザを用いて, 3次元マイクロ構造体を液体中の閉空間で非接触駆動する研究を行った.それぞれのアプローチは特徴を有しており, 更なる機能の向上をはかるとともに, 各利点を活かしたアクチュエータの設計論を確立した. (1) 磁場駆動においては, 3次元形状の磁性マイクロツールを製作した. 三次元微細加工技術とモールディング加工によってPDMSの柔軟性と磁性を兼ね備えた, 様々なタイプのマイクロツールを製作した. このツールの力学的な特性を引っ張り試験によって明らかにした. さらに, このツール内に磁性金属を内蔵するハイブリッドタイプのツールを製作し, 駆動実験を行い, 操作点の剛性が向上できることを示した. これらのツールをマイクロチップ内部で非接触駆動することに成功した. 特にマイクロ流路内に微小電極をめっきにより形成し, 局所的な磁場集中を実現することで駆動特性を大幅に向上することに成功した. また, ツールの駆動方法を分類して, 1自由度, 2自由度のツールの駆動方法を体系化した. (2) レーザ駆動においては, 光トラップが可能な透明マイクロツールをフォトファブリケーションによって製作した. また, レーザ操作とレーザの位相制御を特色とする統合型の光ピンセットにより, これを軌道制御し, マイクロツールを複数用いた操作方法を実現した.
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