研究概要 |
メカノバイオロジーの分野で,生きた細胞に力学的刺激を与えることを目的とした装置の開発が行われている.このような装置は,再生医療や生物学などの研究が盛んに行われていることもあり,近年非常に需要を伸ばしている.しかしながら既存のシステムはモータ駆動のため大型である上,発熱などの問題がある.また,細胞に与えられる刺激は一定方向への引張による伸縮刺激のみである. そこで我々は,柔軟であり人工筋肉やセンサの材料として注目されているIPMC (Ionic Polymer-MetalComposite)を用いて,小型で簡便な細胞刺激デバイスを提案してきた.今回は,作製したIPMCを任意形状に加工することで,細胞に対して様々なパターンの刺激を与えることができるシステムを考案し,試作を行った.細胞培養チャンパの材料には生体適合性が良く,成型性の良い熱硬化性樹脂であるPDMS(Poly(dimethylsiloxane))を用いた.任意形状に加工したIPMCを駆動させることにより,細胞培養チャンバの薄膜部を伸縮させることができる.薄膜表面には細胞が培養されており,薄膜を通してIPMCの変位が伝わる.これにより細胞に力学的な刺激を与えることができる. IPMCを任意の形状に微細加工することで,細胞に対して2次元的な伸展だけでなく,3次元的に押し上げるなどの刺激を与えることができる.将来的には,生体を模倣した動きで細胞を刺激することで,より生体環境に近い形での細胞刺激が可能になる.
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