高温形状記憶合金と高キュリー点の強磁性体の積層化により、高温で高速駆動が可能なアクチュエータ材料が実現できると考え、この実現を目指し、高温形状記憶合金TiAuと強磁性体Co、Fe、Niの拡散接合と積層化、およびこれらの接合界面における拡散挙動、拡散組織および反応層形成の解明を試みた。拡散接合によりTiAu/Co積層材を作製した結果、TiAu/Co界面にはC11_bAu_2TiおよびC36 Co_2Tiが形成することを見出した。Coはこの2種類の金属間化合物相を経てTiAu層側へ拡散し、その拡散の活性化エネルギーは280kJ/molと評価できた。また、773Kでは反応層が成長せず、773K程度までは長期使用が可能とがえられる。次に、TiAu/FeおよびTiAu/Ni積層材を拡散接合により作製し、結果をTiAu/Coと比較した。TiAu/Fe界面にはC11_b Au_2TiおよびC14 Fe_2Tiが形成し、TiAu/Ni界面にはC11_b Au_2TiおよびDO_<24>Ni_3Tiが形成した。また、TiAu/Ni積層材の時効処理により新規三元化合物Au_3Ni_3Ti_2を発見した。接合条件が1073Kで10hにおける拡散層の厚さは強磁性元素により異なり、TiAu/Coで7mm、TiAu/Feで9mm、TiAu/Niで16mmであり、拡散の見かけの活性化エネルギーはTiAu/Coで280kJ/mol、TiAu/Feで250kJ/mol、TiAu/Niで180kJ/molであった。これら拡散挙動をまとめると、TiAuへの拡散はNiで最も速く、次いでFe、Coの順に遅くなる。この結果、CoとFeはNiよりもTiAuへの拡散が遅く、また、CoとFeはNiに比べてキュリー温度が高く磁気モーメントが大きいことから、本積層材の強磁性層として適していると結論した。
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