研究概要 |
環境問題の観点から電気・電子機器に使用される有害物質排除の動きがある中、圧電セラミックスに関してもその無鉛材料の開発がヨーロッパ、日本で盛んに行われている。特に日本において材料開発が活発で、最近になりBi(Na,K)TiO_3系、アルカリナイオベート系で結合係数が0.6を超える材料も見出されている。しかし、前者は100℃以上では使用できず、後者では潮解性が激しいという欠点をもつ。こうした状況下、本研究では(i)-100℃から200℃まで使用可能な圧電材料として、無鉛ペロブスカイトであるチタン酸バリウムーチタン酸ナトリウム・ビスマス(Ba_<1-x>(Bi_<1/2>Na_<1/2>)_xTiO_3、以降BBNT)セラミックスに、(ii)400℃まで使用できる材料としてタングズテン酸ビスマス(Bi_2WO_6:以降、BWO)単結晶に着目している。上記の材料は我々が見出した無鉛圧電材料であり、特にBWO単結晶はPZTセラミックスでは対応できない高温用アクチュエータ材料として期待できる。本年度では、BBNTセラミックスがチタン酸バリウムに比べて圧電特性の温度安定性がよく且つ160℃まで圧電性を有する特性を明らかにした。BWOに関して、その単結晶のバルク化を目指し、大型結晶を作製する上で工業的に最も一般的なチョクラルスキー法、電界を印加することで相移転点でのひずみを抑える目的で行った電界印加チョクラルスキー法、フラックス材を用いることでキュリー点以下での結晶育成を狙ったトップシード法を試みた。結果として、1cmを超える結晶を得られなかったが、フラックス材を用いた徐冷法において最大1.15mmの厚みを持つ結晶を得ることができた。また、BW0結晶は高い電気機械結合係数k_<33>=36%を有しつつ、PZTの使用限界温度の200℃を超える400℃まで使用できることを示した。
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