研究概要 |
本研究では、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の特性を左右する、電極や固体電解質表面ナノ領域における化学状態を調べるため、表面敏感な手法である蛍光収量(FY)あるいは転換電子収量(CEY)を適用したXAFS測定、およびX線光電子分光(XPS)測定より試料内特定元素の価数などを解析することを目的としている。平成19年度においては、Srドープした(La,Sr)MnO_3ペロブスカイト酸化物薄膜を試料として、酸素分圧雰囲気の異なる熱処理を施したときの非化学量論組成への変化に伴う表面層におけるMnの化学状態変化を中心に測定した。FY-XAFSでは通常入射X線により励起された蛍光X線を検出するためバルク構造情報を与えるが、検出角を小さく取る斜出射配置とすることにより、試料表面数nm〜数十nmの構造情報を得ることができる。また検出角依存性を測定すれば、深さ方向の変化を調べることが可能である。CEY-XAFSでは、蛍光X線と同時に励起されるオージェ電子を媒体としているため、その脱出深さ相当の表面領域を対象とした解析が可能である。Mnに対しては、数十nm程度の深さとなる。放射光を利用した実験により、斜出射FY-XAFSでMn価数の深さ方向での変化を検出できた一方で、CEY-XAFSでは殆どバルクとの差異が見いだせなかった。従って、斜出射FY-XAFSでは期待通り、数nmレベルで深さ方向の構造情報を捕らえたことを確認した。現在定量解析を進めている。XPS測定では、Al Kα線を用いたラボ測定、および放射光を利用し8keVの硬X線を用いた測定を行い、検出深さの違いを利用した解析および検出角依存性を利用した解析の有用性を確認した。
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