高温で作動する固体酸化物形燃料電池(SOFC)は燃料電池の中でも非常に高いエネルギー変換効率が期待できるため精力的に開発が行われているが、電池の発電と密接に関わっている燃料酸化反応のミクロスコピックな理解はまだ不十分であり、反応場設計をするうえでの具体的な指針が明確になってはいない。本研究は、第一原理計算を基盤とし、ミクロスコピックな視点から反応の本質をとらえ、それがマクロなレベルでの発電とどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とし研究を行ってきた。電極反応の第一原理計算による反応解析を行う上で、まず必要となるのが反応場の具体的な構造である。ただし、反応場は固体電解質、金属電極、燃料気体を含有できる真空領域を含んでおり、その具体的な(原子レベル)での構造は複雑さを極めるため、どのような計算モデルが妥当であるのかさえ分かっていない。本研究では、この反応場に対して、膨大な計算を行い、反応場に内在する化学的性質が次の2点に集約可能であることを見いだした。1)固体電解質と金属電極の接触部の金属原子の電子状態が孤立原子の電子状態に類似しており、それゆえ化学的に硬い反応場を提供、2)固体電解質と金属電極の接触部の金属原子の電子状態が金属内原子の電子状態に類似しており、それゆえ化学的に軟らかい反応場を提供。それぞれの反応場が、酸素イオン移動に伴う電荷の放出という現象に対して、それぞれ異なる挙動を示すことを確認している。また、この化学的な分類に加え、計算上都合のよい小数原子からなるモデルを上述の化学的性質を保持した状態で構築可能であることを見いだした(点接触三相界面モデル)。本研究による点接触三相界面モデルの提案は、電極反応解析において非常に効果的なモデルの存在を提示しており、同モデルを用いた反応解析により様々なシステムにおいてその電極反応の本質を捕らえることが可能となってくることを示唆している。
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