本研究は、電気化学プロセスに対するフェーズフィールドモデルの構築と伝導体界面の安定性解析を目的としている。今年度は、これまでに開発したモデルを用い、界面領域における電流と電極電位の関係を表すモデルを新たに構築し、そのモデルにより硫酸銅水溶液からの1次元電析を解析した。 一般に電流はキャリアの電気伝導度と電気化学ポテンシャル勾配で表され、界面領域における全電流は、各相の電流に相分率を乗じたものとなる。ここで、各相の電流は同電位勾配下で互いに独立ではなく、各相の伝導度の比により結ばれるとすると、界面領域の電流式が導かれる。この電流式を界面領域で積分するとNernstの式が得られ、電極電位は界面における電極-電解質の化学ポテンシャル差として扱えることが示される。上記のモデルを用い、解析領域両端に銅電極、電極間に電解質水溶液を配置した1次元モデル硫酸銅水溶液からの銅の電析解析を行った。まず、電極と電解質の化学ポテンシャル差を-3000〜20000J/molの範囲で変化させ、平衡状態における電極電位を求めた。その結果、化学ポテンシャル差を与えるとNernstの式と一致した電極電位が得られた。次に、化学ポテンシャル差を-3000〜20000J/molとし、印加電位0.002〜0.01Vとした条件での電析成長を解析し、成長速度と電極電位および印加電圧の関係を求めた。その結果、電析解析では、カソードの電析速度とアノードの溶解速度はほぼ一致していること、電析速度と印可電圧の間には直線関係があることが示された。
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