界面におけるナノイオニクス現象の理解を深めるためには幾何学的にも単純で、各種分析手法を導入することが可能な界面が必要であり、平成19年度はこのような界面として薄膜系における界面の作製を目指した。 まず、SrTiO_3単結晶基板上へLiCoO_2薄膜をエピタキシャル成長させその成長過程を調べることにより、多結晶白金基板上への平坦なLiCoO_2薄膜の堆積条件を確立した。一方、界面における空間電荷層を制御するための緩衝層としては、酸化物ガラス固体電解質の薄膜化に取り組んだ。通常の堆積条件では液滴化現象が激しく、平坦で緻密な酸化物ガラス薄膜を作製することは困難であったが、堆積時の酸素分圧を制御することで、ほぼ平坦で緻密な薄膜の作製に成功した。 最後に、上記の研究で得られた多結晶LiC_oO_2薄膜上に、50Li_4SiO_4-50Li_3PO_4薄膜を酸化物ガラス固体電解質の緩衝層として堆積した積層体を作製し、さらに硫化物固体電解質Li_<3.25>Ge_<0.25>P_<0.75>S_4を積層することで、この薄膜界面における緩衝層の作用を調べた。この界面における反応抵抗を電気化学インピーダンス法により見積もったところ、緩衝層を介在させることにより界面抵抗は1/1000にまで低減され、定量的、分析的研究が可能な薄膜界面においても粉末試料と同様の界面インピーダンスの低減効果を観測することができた。 平成20年度はこの界面を用いたナノイオニクス現象の詳細な研究を進める。
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