希土類と遷移金属を結晶構造中で秩序配列させた一連の化合物群を新規合成し、その磁気的性質を調べることにより、新たなf-f電子間、f-d電子間の相互作用に起因する特異な物性の発見を目指した。ペロブスカイト型酸化物ABO3に注目し、希土類とサイズの大きく異なる白金族元素(ルテニウム、イリジウム、レニウム)を組み合わせることで、Bサイトに入る元素がNaCl型に規則配列した"ダブルペロブスカイト"A2BB'O6構造をとることを見出した。これらの複合酸化物では、酸素原子を介するf-d電子間に強い磁気的相互作用が働くことを解明した。 次に蛍石型構造を基本構造にもつ三元系複合酸化物に着目した。蛍石型二元系酸化物MO2では、Mサイトに入る希土類はセリウムと、高圧条件下でのプラセオジム、テルビウムだけで、従って希土類のf電子が蛍石型構造の物性の中心的役割を果たした例はない。しかし、+5価の遷移金属(ルテニウム、イリジウム、レニウム、ニオブ、タンタル、アンチモン)を含めることで、3価の希土類を蛍石型構造のカチオンサイトへの導入が可能となった(Ln3MO7化合物の生成)。しかも希土類と遷移金属は無秩序にカチオンサイトを占めるのではなく、酸素原子を介して希土類が1次元鎖を形成する秩序配列を示し、さらに同様に1次元鎖を形成する遷移金属と2次元平面構造を持つことがわかった。低温で磁気秩序を示し、さらに構造相転移も引き起こすことを見出し、相転移温度以下の結晶構造を決定した。
|