研究概要 |
グアニジン塩基がプロトン受容した際に形成する水素結合の方向制御に着目し、基質認識部位としての積極的な利用と反応点近傍への効果的な不斉反応場の構築を目指し触媒分子を設計した。要約すると(1)多点水素結合による基質の配向制御によって制御された不斉反応場を構築する。(2)従来の5,6員環などの普通環ではなく、7員環に加えて9員環などの中員環形成により反応点近傍に不斉環境が構築可能な分子設計を行なう。これらの設計戦略を具現化する軸不斉源として、ビナフチル骨格を選択することにした。光学活性ビナフチル誘導体は入手容易かつ多くの化学修飾例、特に3,3'一位への置換基導入が報告されていること、また3,3'一位置換基(G)を適宜選択することで不斉環境を比較的遠くに及ぼすことが可能である。さらに、窒素原子を含む環構造が軸不斉を含んでいるため、中員環構造をとったとしても配座の自由度が比較的小さく複数の反応場の形成が避けられることもビナフチル骨格の利点として挙げられる。本申請研究は触媒反応系の開拓とそれに相応しい高活性と高立体選択的な軸不斉グアニジン触媒の設計開発が鍵となる。そこで、基本となる軸不斉グアニジン触媒のライブラリーを構築するとともに、それを用いて反応系の探索を中心に研究を展開した。触媒ライブラリーは7員環、9員環グアニジンともに、ビナフチル骨格の3,3'一位に導入する置換基(G)に、立体電子的効果の大きく異なる各種置換ベンゼン環を導入して構築した。このライブラリーをもとに触媒と反応基質間、特に求核剤との間で多重水素結合可能な反応系の探索を行った。その結果、軸不斉グアニジンがα-ケトエステルを求核剤とするアゾジカルボキシラートとのアミノ化反応、ならびにジアルキルホスファイトを求核剤とするニトロアルケンへの付加反応の優れた不斉触媒として機能することを明らかにした。
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