研究概要 |
本研究は、不斉アルドール反応などの不斉炭素-炭素結合生成反応において、反応後、系中に添加したアルコールにより再生できる、キラルなスズメトキシドを初めとする全く新しいタイプのキラル金属アルコキシド触媒の開発および、それらを用いた高度分子変換反応の開発を目的とする。昨年度の研究において、アルケニルトリクロロアセテートを用いる不斉アルドール反応で単純なビナフチル骨格を持つキラルなスズジブロミド錯体から反応系中で発生させたキラルなスズジメトキシド錯体を触媒に用いた場合に、明白な触媒活性と不斉誘導が見られた。そこで本年度は、メタノールで再生可能な不斉触媒として、3,3'位に嵩高い置換基を持つ光学活性ビナフトールから誘導される錯体を含め、様々なキラルなスズジメトキシド錯体を合成し、アルケニルトリクロロアセテートとアルデヒドとの不斉アルドール反応において、その触媒活性および不斉触媒としての性能について検討を行った。その結果、3,3'位に4-t-ブチルフェニル基を有するキラルスズジメトキシド触媒を反応系中で発生させ、本アルドール反応に適用してみたところ、目的とする付加体がアンチ選択的に得られ、そのアンチ体に最高で59%eeのエナンチオ選択性が生じる事がわかった。さらに、アキラルなジブチルスズジメトキシド触媒にキラルホスフィン・銀(I)錯体を不斉触媒として組合わせる事により、アルケニルトリクロロアセテートとアルデヒドとの不斉アルドール反応が円滑に進行することも見出した。本反応では芳香族アルデヒドのみならず、α,β-不飽和アルデヒドや脂肪族アルデヒドも適用することができ、対応する光学活性β-ヒドロキシケトン体が良好な光学純度で得られた。
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