研究概要 |
本研究は、不斉アルドール反応などの不斉炭素-炭素結合生成反応において、反応後、系中に添加したアルコールにより再生できる、キラルなスズメトキシドを初めとする全く新しいタイプのキラル金属アルコキシド触媒の開発および、それらを用いた高度分子変換反応の開発を目的とする。昨年度の研究において、アルケニルトリクロロアセテートを用いる不斉アルドール反応で、3, 3'位に4-t-ブチルフェニル基が置換したビナフチル骨格を持つ、キラルなスズジブロミド錯体から系中で発生させたキラルなスズメトキシド錯体を触媒に用いた場合に、良好な触媒活性と不斉誘導が見られた。そこで本年度は、メタノールで再生可能な不斉触媒として、3, 3'位に様々な嵩高い置換基を持つ光学活性ビナフトールから誘導されるキラルなスズジブロミド錯体を合成し、アルケニルトリクロロアセテートとアルデヒドとの不斉アルドール反応において、その不斉触媒能について検討を行った。その結果、4-t-ブチルフェニル置換基を持つキラルスズブロミドメトキシド触媒をプロピオフェノンから誘導したアルケニルトリクロロアセテートに作用させた場合に、最高で94%eeのエナンチオ選択性が生じる事がわかった。さらに、イミン類を求電子剤とする不斉マンニッヒ型反応においては、2, 4-ビストリフルオロメチルフェニル基を持つキラルスズ触媒が高い不斉誘導を起こす事を見出した。また、本触媒システムをマイケル受容体やニトロソベンゼンに適用することによって、ジブチルスズジメトキシドを触媒とするアルケニルトリクロロアセテート類のマイケル付加反応やN-ニトロソアルドール反応も見出した。一方で、アルデヒドやイミン類のシアノ化触媒として関連する二臭化ジブチルスズが有効である事も突き止めた。
|